地震は予知できるのか――。多くの研究者がこの命題に取り組み、国は巨額の予算を割いてきた。だが過去50年間で、予知に成功したケースは皆無だ。
常時監視体制が整っている「東海地震」でさえ、「必ず予知できるとはいえない」と専門家も認めている。日本地震学会のシンポジウムでは、地震予知の研究をめぐって専門家の間で賛否が分かれた。
東大大学院のロバート・ゲラー教授は「地震は予知できない」
北海道函館市で2012年10月16日に始まった日本地震学会秋季大会では、初日に地震予知に関する特別シンポジウムが開かれた。1962年に専門家による「ブループリント」と呼ばれる地震予知の提言書がまとめられて今年で50周年になる。当時「ブループリント」では、地震の観測網の整備で「10年後には地震予知に十分な信頼性をもって答えることができるだろう」と記述されていた。
これまで国は「地震予知計画」として多額の予算を投入してきた。文部科学省の資料を見ると1965~68年の「第1次計画」を皮切りに、1994~98年の「第7次」では5年間で786億5000万円に達した。この間、1995年には阪神・淡路大震災が発生している。
文科省地震調査研究推進本部によると、2011年度の地震調査研究予算は192億円で、このうち国立大学法人向けの「地震及び火山噴火予知のための観測研究」3億9000万円のほか、独立行政法人や気象庁、海上保安庁などで行われる研究や調査にも予算が配分された。
長年にわたる研究や調査でデータも蓄積されているはずだが、2011年3月11日に発生した東日本大震災は事前に予知できなかった。現状では、地震が予期される地域で科学的な観測が実施され、常時監視体制が整っているのは「東海地震」に対してのみ。それでも気象庁のウェブサイトでは「必ず予知できるのかとの問いには、『いいえ』となります」と、その不確実性を認めている。
「実績ゼロ」の地震予知に批判的なのが、東京大学大学院のロバート・ゲラー教授だ。16日の学会の席で、「地震は予知できない」とのかねてからの主張を展開。フジテレビ「スーパーニュース」の取材に対しては、「全世界で地震予知の成功例はない。地震の基礎研究や防災計画に力を注ぐべきだ」と提言し、成功事例が全く出ていないにもかかわらず、地震予知を「打ち出の小づち」のように予算獲得の道具にしていると厳しく指摘した。