生活保護支給額引き下げに反対する会見で、受給者が「1日使えるお金は1000円」と不満をこぼしたところ、ネット上で異論が相次いでいる。
生活保護は、5年に1度、支給基準額が見直される。政府は、保護費の増大を抑えようと、引き下げの方向で検討を始めたようだ。
家賃が実費で出るほか、最低で月に8万円余が支給
これに対し、生活保護問題対策全国会議(代表幹事・尾藤廣喜弁護士)は2012年10月10日、東京都内で受給者らとともに会見を開いて、引き下げ反対を訴えた。支給額が引き下げられれば、生活に大きな影響を与えるというのがその理由だ。
会見では、受給者らも窮状を訴え、NHKニュースによると、受給者の60歳男性は、次のように明かした。
「1日使えるお金は1000円なんですよ。食べるだけですよね。電化製品が壊れたとか、服が破れた場合は、替えるお金がない。人として見てもらえているのかどうか、これは疑問に感じます」
これに対し、ネット上では、服代などもかかることに理解を示す声もあったが、男性の主張に疑問の声も相次いでいる。「俺より贅沢じゃねえか・・・」「食べれるのに何が問題なんだ」「1000円あれば3食食べて、中古の文庫本ぐらい買えるだろ」といった書き込みがあった。
厚労省の保護課によると、東京都区部で60歳なら、住宅扶助として家賃が限度額まで実費で出るほか、生活扶助として最低で月に8万円余が支給される。
「単身なら光熱費などは何万円も使わないと思います」
男性が1日で使えるとした1000円は、1か月なら3万円になるため、都区部に住んでいるとすれば、5万円余が家賃以外の必要経費という計算になる。だとすると生活状況はそれほどひどいとも思えない。
厚労省保護課も、「単身なら光熱費などは何万円も使わないと思います」としており、なぜ食費などに3万円しか使えないのか疑問が多い。仮に3万円で食費を賄うとした場合については、「きついかどうかはお答えできませんが、可能だとは思います」と言っている。男性は地方に住んでおり、物価水準を考慮に入れる必要もあるようだ。
生活保護問題対策全国会議の事務局をしている小久保哲郎弁護士は、食費などが1000円になることについて、十分な額ではないと説明する。
「最低生活費ですので、そんなに余裕があるわけではありません。耐久消費財を買い替えられませんし、下着なども破れるまで着る話はよく聞きます」
ネット上のバッシングについては、疑問を示す。
「確かに、1日1000円以下で苦しい生活をしている人からみれば十分だと言いたくなるのだと思います。でも、生活保護基準が下がれば、最低賃金法の定めによって最低賃金が上がらず、地域によっては下がることもあり得ます。地方税の非課税基準や国保料等の減免基準等も軒並み下がります。生活保護を叩いてその基準が下がれば、自らの首を絞めることになるのです。むしろ最低賃金や年金の低さを叩くべきで、叩くべき相手を間違えていると思います」