マラソンでカンパ訴えた山中教授 事業仕分けで苦しんでいた?

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   ノーベル医学・生理学賞を受けた山中伸弥京大教授(50)は会見で、「日の丸のご支援」があったと日本政府に感謝の言葉を述べた。しかし、そこには複雑な思いがあったようだ。

   受賞が決まった2012年10月8日夜、山中伸弥教授は神妙な表情をして会見に臨んだ。

仕分けで研究費150億円が3分の1になった可能性

カンパは大反響
カンパは大反響
「まさに日本という国が受賞した賞だと感じています」

   静かに受賞の喜びを語った山中教授は、何度も日本政府の支援への感謝を口にした。

   確かに、国立の奈良先端科学技術大学院大に准教授として採用されてから、山中教授は国の支援に助けられた面があるようだ。まだ無名の研究者だったが、文科省所轄の科学技術振興機構を通じ、03年10月から5年半で総額3億円もの研究資金提供を受けた。その後、山中教授は、マウスのほか人でもiPS細胞の作製に成功し、世界を驚かせた。そして、08年4月からは、さらに5年間で約20億円の特別プロジェクトを任せられている。

   ところが、民主党政権に交代した09年になると、科学技術予算は、容赦なく事業仕分けの対象になった。山中教授のプロジェクトも、その1つに挙げられたのだ。これに対し、山中教授は、ほかの研究者らとともに会見を開き、日本は海外より10~20年遅れた環境で研究しているとして、仕分けを「想像を絶する事態」だと強く批判した。

   プロジェクトの予算は、結果的に削減されなかった。しかし、自民党政権時代は2700億円あった内閣府の最先端研究開発支援プログラムは、1000億円に大幅な減額を余儀なくされた。その後、山中教授のプロジェクトは、最大枠の50億円が確保されたが、もし以前のプログラムのままなら、150億円が充てられた可能性がある。つまり、3分の1にまで減らされた恐れがあるということだ。

   それだけに、山中教授が国の支援に感謝を述べたことに、ネット上では、「痛烈な皮肉でしょうね」との見方も出ているほどだ。

海外で特許を取るためのお金など多額の費用

   世界的な研究が認められて、山中伸弥教授は、現在は各省庁から様々な支援を受けている。文科省からは、科学技術振興機構の分を含めて、2012年度は、26.5億円の支援があった。13年度は、同省が44.5億円の予算要求をしている。

   とはいえ、内閣府からの50億円支援などは、13年度末までに終了してしまうことになる。

   京大のiPS細胞研究所は、世界に先駆けて、iPS細胞の実用化を目指している。それには、多額のコストがかかるようだ。職員200人の人件費や最新の機器代、マウス飼育費などのほか、海外で特許を取るためのお金もいる。京大の広報室では、「特許は、お金もうけではなく、研究者が自由な環境で開発するために必要なんですよ。その壁があると、医療は進みませんから」と説明する。

   iPS細胞で期待される再生医療は、日本は、アメリカの10分の1の予算しか出ないとされる。また、海外の研究所は、山中教授の数倍の研究資金で回していると言われている。

   山中教授が好きなマラソンで研究資金を募るようになったのは、まだまだ足りない日本の事情があるようだ。

   12年3月の京都マラソンで、400万円のカンパを訴えたところ、出走前に集まり、目標を1000万円にして現在も募っている。財団法人「ジャスト・ギビング・ジャパン」のサイトを活用しており、ノーベル賞受賞で寄付が上積みされ、10月9日夕現在で1300万円を突破した。

   サイトのコメント欄には、山中教授への応援メッセージがあふれている。「我が子も神経線維腫症という難病です。まだまだこれからだと思っておりますが、いつの日か!という希望が持てました」「僕も神経の再生を待ち望んでる身体障害者の一人です。応援してます!」といった書き込みがあり、研究への期待は大きい。

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