東京電力が保有する資産の売却先が決まるなか、「こんなことまで」というような、本業の電力事業とはまったく関係ない「副業」が次々と明らかになっている。
東電は東京・新宿区にある「東京電力病院」の売却を2012年10月1日に発表したが、今度は神奈川県川崎市と山梨県都留市にある大規模な「釣り堀」を売却することを決めた。東電は原発事故の賠償金や経営再建の資金に充てるため、2011年度からの3年間で総額7074億円の資産を売却する計画だ。
6月までに637億円の不動産を売却
売却する釣り堀は、東電の100%子会社の東電不動産が運営する「FISH・ON!王禅寺」(神奈川県川崎市、敷地面積約5万平方メートル)と「FISH・ON!鹿留」(山梨県都留市、約7万平方メートル)。もとは発電用石炭の灰処理などの用途で保有していた土地だが、発電燃料として石炭の利用比率が低下したことで遊休地となった。土地活用の目的で、2002年に釣り堀の運営を開始した。
売却先は、釣り具チェーン大手のタックルベリー。売却額は合計で約3億円とみられ、11月をめどに引き渡す。
また東電は、相模鉄道などを運営する相鉄ホールディングス(HD)の子会社、相鉄イン開発に東京都内のホテルを、11月に売却する。
売却するのはJR田町駅から徒歩5分にある「トレストイン田町」(客室数123室)と、東京メトロ茅場町駅から徒歩1分の「トレストイン日本橋」(196室)の土地と建物。売却額は合計で20億~30億円程度とされる。
相鉄HDはホテルの名称を「相鉄フレッサイン」に変更。都心部の優良物件を取得したことで、東京駅付近のビジネス客の需要を見込んでいる。
さらに、東電は埼玉県本庄市にあるビジネスホテルの売却も検討している。
東電の「副業」は、東電不動産が手がけていたビジネスだけでも、賃貸用のマンションとオフィス・駐車場、分譲住宅だけでなく、ホテルや老人ホーム・グループホーム、釣り堀にトランクルーム事業などと手広い。
売却が検討されている不動産はこのほかに、「高値売却」が見込める東京都区内を含む関東一円にある東電グループの家族寮や独身寮、保養所に研修所、グラウンドやテニス・バレーボールコート、サービスステーション、変電所や鉄塔の跡地などを加えた1100件以上にのぼり、東電は2013年度までに不動産だけで2472億円分を売却する計画。このうち、原発事故後の11年4月から12年6月末までに累計で637億円を処分した。
病院やデータセンター事業も売却
東電は、大株主の東京都の猪瀬直樹副知事が2012年6月の株主総会で売却を求めていた東京電力病院も、12年度中に競争入札を行い、13年度以降に売却することを決めた。
東電病院は利用者を東電社員やOBらに限った、「東電のため」の病院。113ある病床の稼働率が3割程度にとどまっていたことや、病院が都心の一等地にあることから、東電の「殿様体質」の象徴として批判が高まった。
さらに東電は子会社でデータセンター事業を手がける「アット東京」の株式の過半数を、防犯・警備のセコムに約333億円で売却する。セコムの株式取得は10月31日で、これによりセコムがアット東京の約51%の株式を保有する親会社となる。
子会社などの事業売却は1301億円の計画に対して、6月末までに727億円を処分しており、アット東京の売却で計画の8割を達成している。ただ、東電はなお当間高原リゾートなどを有している。
一方で東電は保有する有価証券の売却も進めており、12年6月までにKDDIや関東天然瓦斯開発などの株式、3207億円分を処分。計画の97%を達成している。