買いたい人はすでに買ってしまった エコカー補助金駆け込み需要「盛り下がり」

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   エコカー補助金の駆け込み需要を見込んでいた自動車業界では、夏場に入って冴えない受注ペースが続き、失望の声があがっている。

   補助金の消化が進み、打ち切りが見え始めた今は、本来ならば需要が盛り上がるのが自然な流れ。ところが2012年7月頃から受注ペースが鈍り始め、盛り上がりどころか「盛り下がり」と言われる拍子抜けの状況にある。販売関係者は補助金の下支えを失ったあとのさらなる落ち込みを心配している。

消化は急速に鈍り、現時点では9月半ばまで大丈夫

   一定の燃費基準をクリアした登録車の新車購入に10万円、軽自動車に7万円を支給する今回のエコカー補助金は2011年12月20日に始まった。予算総額は3千億円。1~6月の新車販売は、前年比53・6%増の294万7千台と好調に推移し、景気を下支えした。伸び率が大幅なのは前年が東日本大震災の影響を受けたためだが、水準で見ても直近6年間で最高と、かなりの売れ行きだった。

   自動車業界はこの調子で販売が伸び、夏場には駆け込みが起きて補助金が終了、さて秋からどう立て直すかと年内を見通していたが、実際の展開は違った。日本経済新聞は6月、「7月末にも補助金終了」と報じたが、その後の予算消化は急速に鈍り、現時点では少なくとも9月半ばまでもつのではないかと見られている。

買わない人まで買わせるほどの力はない

   なぜ消費者は残り少ないエコカー補助金になびかないのか。販売関係者は「2年前の補助金はスクラップインセンティブで25万円と金額が大きくインパクトがあった。今回はそれに比べると迫力がない」と話す。スクラップインセンティブとは車齢13年超の古い車からの乗り換えを条件とした買い替え促進策で、2010年8月には駆け込みが発生し、ディーラーの店頭は大騒ぎになった。

   別の関係者は「補助金でアクアやプリウスαなどハイブリッドの人気車にはさらに人気が集まったが、不人気車は不人気のまま」「買いたい人の背中を押す材料にはなっても、買わない人まで買わせるほどの力はない。買いたい人はすでに買ってしまって、需要を先食いしてしまったのではないか」と言う。

補助金は回数を重ねるごとに効果が薄れる

   補助金は回数を重ねるごとに効果が薄れると言われる。新車の買い替えを促す補助金をたびたび実施したイタリアでは、回を追って販売を押し上げる力が弱まった。日本の新車販売業界にも、エコカー補助金をありがたがることに対して疑問視する声が増えている。

   ある関係者は「補助金は麻薬のようなもの。一時的に市場が急に膨らんだりしぼんだりするのも問題で、せっかく経営体質を強くしようとしても流されてしまう」と言う。政府や与党がぶら下げてくるエコカー補助金に目をくれず、自動車取得税や自動車重量税の撤廃に集中して働きかけるべきだ、という意見は確実に強まってきている。

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