仙台市内の私立高校で、2年男子生徒(16)が左腕にタバコの火を何度も押しつけられるなどのいじめを受けたと訴えている。しかし、学校からは、なぜか退学を求められたというのだ。
赤く腫れた水ぶくれの跡――それが左腕のひじから手首まで、びっしり23か所もできている。テレビニュースでは、男子生徒が報道陣の前でサポーターを外した瞬間を生々しく映し出した。
やけどの様子を撮影される
支援団体のNPO法人全国いじめ被害者の会などによると、男子生徒は、2011年11月ごろから3、4人ほどの同級生らに腹や胸などを殴ったり蹴ったりされるいじめを受けるようになった。担任教師の前でも殴られたという。そして、12年5月下旬には、「根性焼き」として、その場にいた同級生2人から、左腕に自分でタバコの火を押しつけるようにさせられ、さらに同級生1人が生徒を押さえつけ、いじめの中心だったもう1人が2回に分けて、計22か所もタバコ火でやけどを負わせた。
また、やけどの様子をプリクラで撮らされ、「根性焼き最高」と書かれたシールを作らされたともいう。
男子生徒は、6月に学校に相談したが、いじめが止まないため、翌7月から不登校になった。その後、8月3日になって、両親とともに同級生らを交えて学校側と話し合い、同級生らは殴ったり蹴ったりしたことは謝罪した。ところが、根性焼きについては謝罪せず、学校側はその場で6日までに男子生徒が自主的に退学届を持ってくるよう求めてきた。
その理由としては、痛々しいやけどの跡をほかの生徒に見せ、気分を害するような動揺を与えたためと説明したという。学校側は、退学届を持ってこなければ、この日付で退学処分にすると男子生徒側に伝えた。
話し合いに同席した全国いじめ被害者の会の大澤秀明理事長は、取材に対し、こう学校側に反論する。
ニュースで学校名を特定
「男子生徒は、左腕にいつもサポーターをしており、学校で見せろと言われて無理やりはがされただけです。自分からほかの生徒に見せたことはありません。学校側は、それを理由にして、退学にしたかったのでしょう。自主退学を求めたのは、処分すれば学校側に理由がいるので、それを避けたかったからだと思います」
その後、男子生徒と両親らは2012年8月6日、仙台東署に被害届を提出し、受理された。報道によると、仙台東署では、傷害と暴行の疑いで捜査を始め、同級生らの事情聴取も予定している。
男子生徒らは翌7日、学校側と再度話し合い、同席した大澤秀明理事長は「男子生徒は無理やりやけどさせられたのに、退学しろというのはおかしい」と抗議した。退学処分の撤回を求めると、学校側は、校長がいないとして、処分を保留にすると説明したという。一方で、同級生らの処分はしていないといい、大澤理事長は「警察の捜査結果でやらざるを得ないでしょう」と言っている。
男子生徒が通う私立高校は、スポーツが盛んなことで知られる。マスコミでは、学校名を伏せて報じているが、NHKニュースで映された学校の様子から、ネット上で学校名が特定され、様々な意見が上がっている。滋賀県大津市の中2男子生徒自殺でいじめ問題がクローズアップされたことから、「なんでこうも弱者ばかりが辛い目にあうの?」「日本の教育施設どうなっとるんだ」と疑問の声も相次いだ。
この私立高校に取材のため電話すると、夏期休業中であることを知らせる留守電が流れてそのまま切れた。なお、学校側は、他のマスコミ取材に、男子生徒が当初自分でやけどの跡をつけたと話すのを聞いて退学を求めたと説明し、詳細については調査中だとして「現時点ではコメントを控えたい」と回答している。