東京電力が2012年8月6日、福島第一原子力発電所での事故直後、本店と現場の間で行われたテレビ会議の映像を公開した。当時の緊迫した状況が伝わる内容ではあるが、ぼかしやピー音だらけで、ネットからは「アダルトビデオみたいだ」といった声が出ている。
公開されたのは、2011年3月11日から16日までの間、東京の本店と福島第1、第2原発、柏崎刈羽原発などを結んで行われたテレビ会議の映像。本店で記録された約50時間分は音声付きで、第2原発で記録された約100時間は音声なしの映像のみとなっている。
「すみません。ピーー。吉田所長、吉田所長」
画面はそれぞれの会議室ごとに6分割されていて、14日に3号機建屋が水素爆発を起こした際には、吉田昌郎所長(当時)が「本店!大変です!大変です! 3号機、多分水蒸気だと思う。爆発が起こりました」と叫んでいる。その後「パラメーター見てくれ!3号のパラメーター!」と声が飛び交い、「現場の人は退避!退避!」と指示が出ている。
一方で12日、最初の水素爆発が1号機建屋で起きたときの映像では、免震重要棟内の会議室が大きく揺れ、現場が混乱する様子が映っているものの、音声はない。
未曾有の危機的状況なのに、半分以上のシーンで、音声が記録されていないというのは奇妙な感じだ。さらに東電は社員のプライバシーの観点からという理由で、映像を加工。29か所でぼかし、1665か所でピー音が入る。「すみません。ピーー。吉田所長、吉田所長」という具合だ。画面6分割で、ただでさえ見えにくいのに、清水正孝社長の顔にまでぼかしが入るシーンもある。
「一度日本ビデオ倫理協会に回ってから処理したのかな?」
これまでも東電の「隠蔽体質」は強く批判されてきたが、今回の映像についてもネットで「不都合な真実にはフタをする、いつものウソつき東電で安心した」といった声が噴出。
「モザイクやピー音だらけ!AVかよ!」という見方も多く、「音声まで消して!喘ぎ声でも入ってるのか?」「東電が公開したTV会議映像は一度日本ビデオ倫理協会に回ってから処理したのかな?早く無修正の映像が見たいなーーw」といった呟きが出ていた。
また、菅直人前首相が15日朝に本店に乗り込み、全面撤退しようとする同社幹部を叱責したとされるシーンも音声はなかった。映像では、マイク片手に大きな手振りで興奮しているかのように演説する菅前首相の姿が映っている。ほとんど無声映画の世界だ。
菅前首相の本店乗り込みを巡っては、東電が本当に全面撤退を決めていたのか、また、菅前首相が必要以上の介入をして現場を混乱させたのかが争点となっている。
菅前首相は2012年8月7日のブログで「私の話の部分だけ音声がないという。極めて不自然であり、全て公開すべきだ」と主張。2011年3月14日夜から15日未明にかけ、東電から撤退したいという話があったとし、
「今、東電が撤退したら日本が危なくなる。何としても踏ん張ってもらいたいという気持ちを率直に述べた。叱責したのではなく命がけで頑張って欲しいとお願いし、鼓舞したのだ。そして、私自身もその覚悟であることを吐露したのだ。音声が公開され、しっかり聞いていただければ、私の真意は分かってもらえると信じている」
と書いている。