格安航空の弱点が露呈 「折り返し」で芋づる式遅れ続出

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   国内を拠点とする格安航空会社(LCC)3社が出そろい、本格的な日本の空の価格破壊が始まった。だが、最後発のエアアジア・ジャパンでは、「初便満席」という「ご祝儀相場」もなく、就航初日には搭乗率50%台の便も続出した。

   最終便は予定よりも1時間以上遅れるなど、「一度遅れると影響が長引く」というLCC特有の弱さも改めて明らかになった。

一度遅れが出ると後の折り返し便まで影響残る

エアアジア就航初日の最終便は1時間以上遅延した。「主に各便の搭乗時における人数確認に時間を要したため」だと説明している
エアアジア就航初日の最終便は1時間以上遅延した。「主に各便の搭乗時における人数確認に時間を要したため」だと説明している

   LCCが抱える問題のひとつが、「折り返し問題」。LCCでは1日に飛べる回数を増やすために、目的地に着いてから折り返すまでの時間は30分程度で、従来の航空会社よりも15分ほど短い。CAは短期間で機内清掃や乗客の搭乗案内をこなす必要があるが、一度遅れが出ると後の折り返し便まで芋づる式に影響が残ってしまう。

   例えば、2012年8月1日に就航したエアアジアの路線では、同日初便の成田発新千歳行きは定刻の7時に出発できたものの、最終便の新千歳発成田行きが成田に到着したのは、定刻よりも1時間8分遅い21時18分。エアアジアでは、遅れの理由を、

「主に各便の搭乗時における人数確認に時間を要したため」

と説明している。

   この問題は、エアアジアと競合するジェットスター・ジャパンでも起こっている。同社就航初日の7月3日に、最終便の新千歳発成田行きが欠航を余儀なくされ。福岡や成田の折り返し作業で遅れが積み重なり、この飛行機が新千歳に着いたのが定刻より1時間22分遅れの21時32分。成田の運用が終わる23時までに着陸することが絶望的になり、欠航となった。

   乗客の多くは、ジェットスターが手配したホテルに宿泊し、翌朝の臨時便で新千歳から成田に向かっている。この便は、7月12日にも同様の理由で欠航しており、構造的な問題だと言える。これを受け、ジェットスターでは7月23日から一部ダイヤを20分前倒す対策をしたが、それでも問題は解決せず、8月6日には成田と福岡を往復する計2便が同様の理由で欠航している。

1回のトラブルで何便も欠航が出る

ジェットスターはバードストライクが原因で2便が欠航、1便が遅延した
ジェットスターはバードストライクが原因で2便が欠航、1便が遅延した

   もうひとつの問題が、機材手配の問題だ。大手航空会社であれば、仮に1機にトラブルが発生したとしても、別の飛行機を現場に向かわせて影響を少なくできる。ところが、LCCでは少ない飛行機を使い回してコストを下げているため、1回のトラブルで大きな影響が出る。

   例えばピーチでは3月28日、CAが長崎空港でドアの操作を誤り、脱出用の滑り台を作動させてしまった。LCCでは修理用備品の在庫を最小限に絞っているため、新品の滑り台を取り寄せるのに時間がかかり、3日間で計13便の欠航を余儀なくされた。

   ジェットスターは、7月28日にはバードストライクが原因で1便が大幅に遅れ、2便が欠航している。

   これらの問題について、エアアジア・ジャパンの岩片和行社長は、

「今持っている(2機の)機材を出来る限り有効に活用しながら、1日のうちの飛行時間を最大化してコストを下げるというのが基本的なLCCの考え方だ」

として、予備機を導入する考えを否定。その上で、

「10機ぐらいに増えてくる間に余裕が出てくると思う。しばらくは申し訳ないが、限られた機材の中で運航していきたい」

と理解を求めた。

「他社振り替えなし」の原則破られる

   なお、いずれのケースでも、航空会社はチケット代金の払い戻しや自社の他の便への振り替えには応じるものの、基本的には他社への振り替えに応じることはない。LCCの安さは、これらの制限と引き替えに実現されている面もあり、消費者はLCCの特徴を理解して利用することを求められている。

   ただし、8月6日のジェットスターの欠航では、この「他社には振り替えない」という原則が破られた。欠航になったのは成田と福岡を往復する計2便だが、金券を配ったりホテルを手配するのではなく、成田-福岡、羽田-福岡のJAL便に振り替える形で対応した。欠航した2便ともほぼ満席で、影響が大きいと判断したようだ、同社広報では「異例中の異例の措置。今後はケース・バイケースで判断する」と説明しているが。同様の事態が繰り返された場合、利益を圧迫することにもなりかねない。

初便でも「無償招待」はあえてせず

   また、搭乗率も課題だ。先行するジェットスターでは路線別の搭乗率は公表していないが、7月3日から7月31日の国内線全路線の平均搭乗率は85.5%だとしている。

   その反面、8月1日のエアアジアの運航初日の搭乗率は低調だ。例えば、3往復した成田-新千歳路線の場合、往路の搭乗率は84%、92%、89%と健闘しているものの、復路は54%、57%、48%と苦戦。初便の成田発福岡行きも66%だった。

   ただし、12年6月のスカイマークの成田-新千歳線の搭乗率は42.0%で、成田-福岡路線は40.4%。成田の不便さが搭乗率に影響しているとみられるが、LCCの低運賃で、これをどこまで引き上げられるかが課題だと言えそうだ。

   搭乗率については、岩片社長は、

「初便の予約状況では8割前後埋まってきているとのことだった。たまたま今日は、予約していて来なかった人を含めて、その数字になった。よく航空会社は『初便は満席で飛び立った』というふうにコメントしてもらいたいので、無償で色々な人を招待するということをよくやるが、あえて私たちはそれをしなかった」

と釈明。その上で、

「それでも3分の2が7時発という非常に早い時間にご搭乗いただいているので、私は満足している。平均搭乗率は8割ぐらいを今後目指していくということで、私は順調なすべり出しだったと評価している」

と話していた。

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