静岡県御前崎市にある、中部電力の浜岡原子力発電所で進めている津波対策工事の完了時期が2012年12月から1年延期されることになった。
東日本大震災時のような巨大津波が押し寄せ、浜岡原発の電源がすべて喪失した際に備えた緊急時用の発電機の工事量が、当初の想定を上回ることが判明したためで、これにより浜岡原発は少なくとも13年までは再稼働できなくなった。
ケーブル総延長700キロメートル、電源盤300台に増やす
中部電力によると、2011年7月に策定した浜岡原発の津波対策では当初、12年12月の工事完了を目標に進めてきた。しかし、12年3月に原子力安全・保安院が公表した東京電力福島第一原子力発電所の事故から得られた知見(中間取りまとめ)を踏まえ、また、これまで公表されてきた事故調査報告書をもとに安全性をさらに高めるため、3月に浜岡原発の地震・津波対策の見直しを公表。その中の「緊急時対策の強化」の電源設備対策で、工事量が大幅に増加することになり、作業が混み合うため、「1年程度の工期延長が必要となった」という。
具体的には、緊急時に原子炉や使用済燃料プールの冷却機能を確実に確保できるようにするために必要な電源を供給するガスタービン(非常用交流電源装置)を高台に設置し、かつ台数を増やす。
中電は「高台に設置するタービン建屋の工事量の増加は、免震構造上から、また大型化を伴うものになります。福島原発の事故を保安院が中間とりまとめをしたあと、見直しを図って強化したものです」と説明する。
電源設備の強化のポイントとして、「重要なのは、電源を確実に確保して冷却装置を稼働させるための供給ルートの多重化にあります。そのために、当初130キロメートル延長するはずだったケーブルは総延長700キロメートルとし、また100台を増やすはずだった電源盤は300台に増やすことにしました」と話す。
あわせて、中電は海抜18メートルの防波壁の新設など30項目の対策を打ち出していて、発電所敷地海側への防波壁の設置工事などの浸水防止や建屋外壁の防水構造扉の強化などの対策は、当初の計画どおりに進捗している。
ちなみに、内閣府が3月末に公表した1次報告では、浜岡原発に最大21メートルの津波がくる可能性が指摘されている。