病院や診療所が多額の消費税に苦しんでおり、訴訟も起きていることは、ほとんどの国民に知られていない。神奈川県保険医協会は会員 (医師) だけでなく患者にも関心を持ってほしいと待合室に張るポスターを配付したりしている。2012年 7月24日には、訴訟の原告を招いての講演会を開催した。
大病院では経営圧迫要因に
講演したのは兵庫県民間病院協会副会長でもある吉田静雄・尼崎中央病院理事長。事業者は売り上げで預かった消費税から仕入れで払った消費税の差額を税務署に納める。ところが医療費は非課税のため、患者から消費税を取ることができず、医薬品や医療機器、材料、備品購入時や建設時などかかる消費税の多くが払いっ放しになっている。また、医療費は公定価格のため、その分の値上げもできず、結局は医療機関の損金になっている。
そこで尼崎中央病院など兵庫県協会の4病院は2010年 9月、消費税は憲法の平等原則や財産権などの侵害にあたるとし、国に払いずみの消費税の一部(各病院1000万円)を払えとの訴訟を起こした。その一審判決が今年10月16日に予定されている。
吉田さんによると、公判で国は「 3%導入時の1989年に12項目、 5%に上げた1997年に24項目の診療報酬で消費税分を補填した」「多少の負担は厚生労働省の裁量権の範囲」などと説明している。
しかし、病院ごとで違う消費税をわずかな項目で解消できるわけはなく、現に大学病院や大病院では年に億円単位の損金が出ており、経営を圧迫している、との調査がいくつも出ている。外国でも非課税の国はあるが、ほとんどが公立病院だったり、特別な制度で対応したりしている。
吉田さんは、同じく消費税が取れない輸出業者には払い戻しがあるように、国は医療機関にも払い戻せる制度 (仕入税額控除) を作るべきで、判決のいかんにかかわらず医療機関が団結して要求していくように訴えた。
(医療ジャーナリスト・田辺功)