タブレット端末のデザインを巡って米アップル社が韓国のサムスン電子社を特許侵害で訴えていた問題で、イギリスの高等法院はアップルの訴えを退けた。「サムスンの商品はアップルほどクールじゃない」という理由で、各国のネットで話題になっている。
争点となったのは、アップルの「iPad」とサムスンのギャラクシータブのデザイン。
「iPadと誤認されることはない」
これまでの報道をまとめると、裁判を担当したコリン・バース判事が2012年7月9日の判決で、ギャラクシータブについて「前から見たデザインはアップルの端末と同じ系列に入る」。一方で、ギャラクシーの方が薄く背面のデザインも異なり、アップルの権利を侵害していないとし、「ギャラクシーはアップルのような控えめで非常にシンプルなデザインを有しておらず、アップルほどクールではない。iPadと誤認されることはない」とした。
両社は2011年、アップルがサムスン製品について「iPhone」「iPad」のデザイン特許を侵害していると訴えだしてから、現在まで10カ国以上で互いに訴え合っている。2012年6月末には米国でサムスンが敗訴し、「ギャラクシータブ10.1」を販売差し止めとする命令が裁判所から下されている。
実はサムスンは、自社のデザイン力に自負を持っている。1993年、李健熙(イ・ゴンヒ)会長が発表した「新経営宣言」で、経営の中心にデザインを据えて改革を進めてきたのだ。現在は世界7か所にデザインセンターを置き、デジタル機器の新製品を出すたびに、欧米のデザインコンクールで数々の賞を獲得している。他のメーカーを差し置いて「金賞」に輝いたことも少なくない。
今回の英国での判決について、サムスンは自社の知的所有権が認められたと歓迎する内容のコメントを発表。一応勝訴したのでよしとしているようだが、「クールじゃないからパクリではない」というユニークな判決について各国のネットで多くの書き込みが寄せられた。
「サムスンは笑えばいいのか、泣けばいいのか」
米国のニュースサイトのコメント欄には「凄く笑える。判事が本当のことを言ってしまった」「この判事はユーモアがあるな」といったものが寄せられ、日本でも「アップルは負けたけど勝ったみたいな判決(笑)」「そんな理由聞いたことない」という感想が見られた。
韓国のネットではサムスン勝訴が判決理由とともに報道され「裁判には勝利したが、アップルの方がデザインがいいのか……」「サムスンは笑えばいいのか、泣けばいいのか」「裁判には勝ったが侮辱的だ」と悔しがるものがいくつか寄せられていた。
一方で、モバイルツールに詳しい、武蔵野学院大学准教授の木暮祐一氏は、
「両社のデザインや技術特許に関する訴訟みると、余りにも当たり前のものが特許登録されてしまっているという印象を受ける」
と語る。
各メーカーはアップルの権利を侵害しないよう、スマートフォンやタブレットの角を丸くしないようにするなどの対策を取っているが、
「アップルはシンプルで、ある種当たり前のデザインを登録している。企業の利益のためにデザイン登録しているけど、利用者からすれば、選択肢の幅が狭まって不利益になる。スマートフォンは特許の固まりなので訴訟が絶えないが、どこまでが常識で、どこまでを特許として認めるか考え直さなければいけない時期にきている」
サムスン製品については、
「アップルからすれば、デザインが似ているから訴訟を起こしているが、最終的に重要なのは使い勝手。利用者はアップルにデザインが似ているから使っているのではなく、それぞれいいところがあって皆使っている。ギャラクシーの方が使い勝手いいという人もいますからね」
と話している。