大手電機メーカーのパナソニックが2012年10月に始動する「新本社」の人員を、現在の7000人から一気に数百人規模に縮小することがわかった。
12年3月期連結決算で過去最大の7721億円の最終赤字に転落した同社は当初、事業部門などへの配置転換の推進や、数百人規模の早期退職の募集などで人員を半数以下に削減するとしていた。生き残りに、その程度では間にあわなくなったようだ。
本社に残れない約6000人はどうなる
新本社に残れる人員は数百人。じつに6000人を超える人員が本社からふるい落とされることになる。
パナソニックは、「具体的な数字は情報開示していませんが、(本社規模が数百人になる)方針は間違いありません」と話す。狙いは「役割分担の明確化」にある。本社機能は、戦略立案や投資の決定など企画を中心に据えて、意思決定を迅速化する。
一方、本社に残れない約6000人は、研究開発や生産技術、調達などの各事業部門をサポートする「全社サポート部門」を新たに設置したうえで移す。
パナソニックの連結従業員は12年3月末時点で約33万人。薄型テレビや半導体などの業績不振事業の人員を削減したほか、三洋電機の白物家電事業を中国ハイアールに売却したことで、前年同期に比べて1年間で3万6000人以上減少した。
事業部門の人員削減に一定のめどがついたことで、いよいよ「本丸」に切り込もうというわけだ。
しかし、本社の人員削減は事業部門や子会社への配置転換が一般的。同社でいえば、AV機器や白物家電、エネルギー事業などの事業に移ることだ。早期退職の募集という手立てもあるが、そんなに多くは望めず、数百人規模にとどまるとみられている。
リストラが思うように進まない可能性もあって、本社人員の「全社サポート部門」への移行は、やがて解雇が見込まれる人員の「移動先」であり、また同社がリストラにあまり時間をかけていられない状況に追い込まれつつあることを示しているようでもある。
「聖域」だった本社もいよいよリストラ
本社人員の大幅な削減となると、パナソニック史上で初めて、とされる。同社は創業者である松下幸之助氏の意向もあって日本的な家族主義を標榜してきたため、これまで人員削減には慎重だった。
それが、2000年に「破壊と創造」をスローガンに掲げた中村邦夫・現相談役の社長時代以降、「聖域なき改革」のリストラ策に取り組んできたはずだった。ところが、歴代トップが踏み込まなかった「聖域」として、7000人に膨れ上がった本社が残った。
津賀社長が、本社に大ナタを振るわざるを得ないのは、過去最悪の7721億円の最終赤字の解消への「覚悟」の表れでもある。13年3月期は、薄型パネルの生産縮小などのリストラに加え、成長が見込める太陽電池や白物家電事業を業績回復の柱に据えて、最終損益は500億円の黒字転換を見込んでいる。