「給与明細書を見たら住民税がものすごく引かれててイヤになった」「どうして住民税がこんなに引かれているんだ。計算間違いじゃないの」「これ以上なにを切り詰めて暮らすのか…」――。2012年6月25日。うれしいはずの給料日に、そんな不満がネットにあふれた。
なぜ、こんなことが起こったかといえば、民主党になって年少扶養控除が廃止されたため。子ども手当も減らされて、さらには厚生年金保険料や健康保険料は上昇するなど、税金と保険料に生活が押しつぶされてしまう。
消費増税を含めると、1年を11か月分の給料で暮らすことに!
住民税の負担が増えることは、じつはわかっていた。民主党の子ども手当の導入に伴い16歳未満の年少扶養控除が2011年度に廃止された。控除額は所得税が年38万円、住民税が年33万円にのぼる。
つまり、子ども手当の導入と引き換えに、年少扶養控除の廃止という実質的な「増税」が決まっていたわけだ。
住民税は2011年の所得税をもとに算出され、6月分から徴収がはじまる。「タイムラグがあったので、給与明細を見るまで忘れてしまっていたのでしょう」と、家計の見直し相談センターのファイナンシャルプランナー、八ツ井慶子さんは話す。
さらには、肝心の子ども手当も4月に廃止され、児童手当が復活。支給額は一人あたり月1万3000円が1万円と、3000円減額されている。
年収500万円の家庭(父母と小学生と中学生各1人の4人家族の場合)が、どの程度の負担を強いられるか、八ツ井さんに試算してもらったところ、年収500万円の家庭はこの5月まで手取り収入で約409万円あったが、それが6月からは398万円と、年間10万円超も減収となるという。
住民税は一律所得の10%なので、一人あたりは月額2750円の負担増になる。住民税だけみた場合、4人家族で、控除されていた16歳未満の子どもが2人いれば5500円もアップすることになる。
さらに子ども手当ての減額分が年間7万2000円(3万6000円×2人)、これに6月26日に国会を通過した消費税の「5%→10%」の増税分の負担を14万2000円加算すると、年間約31万8000円の負担増。「約1か月分の給料分が減って、1年を11か月分で暮らす計算になります」と話す。
ちなみに、所得税は11年4月から年少扶養控除の廃止に伴い、月額3000円程度(所得税率によって異なるが、仮に約10%とした場合)の「増税」となっている。
とにかく「稼ぐこと」しかない
高齢者人口の増加で国が負担する医療費が激増。この医療費を支えているのは健康保険料で、これも4月から徴収率が引き上げられたばかり。10月分からは厚生年金保険料も上昇。さらに40才以上の国民が支払う介護保険料もアップし、これらの保険料は現役世代の給料から天引きされている。
「最近は給与明細も電子化されて、毎月きちんと確認しない人もいます。ある日見たら、こんなに引かれてました、ではダメです」と、前出のFP八ツ井慶子さんは話す。
負担はまだ増える。復興財源法が成立による臨時増税で10兆円を確保することになり、2013年1月から所得税額の2.1%の上乗せを25年間、2014年6月からは10年間にわたり住民税が年間1000円上乗せされる。
別のファイナンシャルプランナーの鬼塚眞子さんは、「おそらく年収400万~500万円でお子さんのいる家庭が一番大変だと思います。削れるものがないんで、とにかく稼ぐしかないと、パートの掛け持ちが当たり前になっていますね」と話す。