「大阪の中之島図書館、廃止へ」というニュースが一部で流れ、「またも大阪の文化を無くす気か!」「建物はどうなるんだ?」といった抗議や問い合わせが大阪府に多数寄せられた。歴史的な建造物を取り壊す、と受け止められたらしい。
2012年6月19日に開催された府市統合本部会合で、大阪市の橋下徹市長と大阪府の松井一郎知事が、別の施設として活用する方針を表明したのだという。
「あんなところに図書館を置く必要はない」?
中之島図書館は1904年に第15代住友吉左衛門の寄付で作られたもので、外観はギリシア神殿の佇まいで、中央ホールはドーム状の教会を思わせる造りになっている。年間の利用者は30万人以上で、蔵書は50万冊。本館と左右両翼の2棟は国の重要文化財に指定されていて、建立100年を越えた現在は府民にとって大阪の文化を象徴する存在になっている。
大阪府と大阪市は11年12月に「大阪府市統合本部」を設置し、統合に向けたビジョンを策定している。その14回目の会議が2012年6月19日に開催され、大阪の魅力を増す方法や、類似・重複している行政サービスや施設の経営形態の見直しなどが話し合われた。そこで議論されたのが中之島図書館のあり方で、共同通信が配信した記事によれば、橋下市長と松井知事が、
「大阪市北区の中之島図書館を廃止し、別の施設として活用する方針」
を表明した、とされている。活用方法は未定だが、会合後に松井知事はぶら下がり取材で、
「例えばあそこで事業をしたいという公募事業者は、ものすごい数がいるはずだ。すごいスポットになる」
と説明し、橋下市長も「あんなところに図書館を置く必要はない」と述べたと書いている。
大阪府には大阪府立中央図書館、大阪市には大阪市立中央図書館など様々な図書館がある。中之島図書館は大阪市唯一の府が運営する図書館のため、「大阪府市統合」構想の合理化の一環として中之島図書館が廃止されるのだろうと推察する人もいる。「ツイッター」でもこの記事が話題になっていて、橋下市長に対する批判が圧倒的だ。
「アホかあああああああ!中之島図書館はあの周辺の司法事務所や建築事務所の調べ物にどんだけ役に立っているか。橋下知事、一気に支持する気失くなった」
「これまで橋下がどれだけの文化を壊してきた」
「元大阪市民としてはとてもさみしい。なくしてもいいって思える人がトップにいることが」
こうしたツィートを読むと、いかに地域住民に愛されている図書館なのかがわかる。
建て直しや、一般企業への貸し出しはない
本当に中之島図書館は無くなってしまうのか。大阪府に問い合わせたところ、図書館を管轄する府の教育委員会は「まだ何も決まっていない」という。「大阪府市統合」に向け、府と市で重複する施設の一部はコスト軽減のため廃止することになるが、中之島図書館については府と市統合のシンボルにする案も出ていて、隣接する市中央公会堂などを含めこの一帯は大阪文化を象徴するゾーンになる予定だという。
今回の記事が出たことで、大阪府に多くの批判や質問が寄せられたため、事実を確認した、という。確かに記事に書かれていることを府知事と市長は話したが、府知事が言った「事業をしたいという公募事業者」というのは、カフェなどのテナントを図書館に入れたらどうか、という話であり、市長の「あんなところ」というのも、市長はかねがね中之島図書館を歴史的建物だと絶賛していて、例えば美術館にしてもいいのではないか、と提案しているそうだ。
「とにかく中之島図書館は国の重要文化財ですので、皆さんが心配されている建て直しや、一般企業への貸し出しなどはできません。今後どのように活用するかは議会の承認も必要ですし、決まるのはまだ先の話です」
と教育委員会は話している。