原子力発電所の稼働をゼロとした場合、経済産業省・資源エネルギー庁は2030年の電気料金が、現在の約2倍に達する可能性があることを明らかにした。
国立環境研究所や地球環境産業技術研究機構に大阪大学、慶応大学、日本経済研究センターがそれぞれ試算の数値を出した。既存の原発コストも加味したうえで、原発の稼働をゼロ、火力発電を50%、再生可能エネルギーの稼働を35%とすることが前提だった。
再生可能エネルギーが増えても電気料金は上がる
資源エネルギー庁の総合資源エネルギー調査会(枝野幸男経産相の諮問機関)基本問題委員会によると、2010年と同じ割合で原発と火力、太陽光や水力などを使って発電した場合、5者の平均で約30%以上の値上げとなるとした。
火力発電を減らし、再生エネルギー発電を増やすケースの中で、原発を「稼働ゼロ」にした場合、41.9~104%の変化率となり、大幅な負担増になるとした(変化率100%=価格が2倍になる)。大阪大学の場合は2倍以上になるという試算が出た。
原発を15%稼働したと仮定。残りを火力40%、再生可能エネルギー30%の稼働で補ったとしても、最大で72%の負担増になるとみている。
この調査は、そもそも「発電にどのエネルギーをどれだけ使うか」を判断する際の参考にするために公表したものだが、「原発ゼロ」で最悪の場合、電気料金が2倍超になることがわかった。
ちなみに、原発と火力、再生可能エネルギーを、どのように組み合わせても電気料金が値上げされる結果になっている。太陽光などの再生エネルギーによる発電を促すための送電線の増強などで6兆8000億円~21兆1000億円の追加コストがかかることや、「再生可能エネルギーの固定価格買い取りの費用が電気料金に上乗せされるため」という。
なお試算は、国内総生産(GDP)の実質成長率を2010年代を年率1.0%、20年代は0.7%に想定した。
原発動かさなくても、電気料金は上がる?
また、東京電力福島第一原発の事故後の2011年6月に「日本エネルギー経済研究所」(IEEJ)がまとめた「原子力発電の再稼働の有無に関する2012年度までの電力需給分析」には、すべての原発が停止して火力発電で代替した場合、燃料コストの増加によって標準的な家庭の電力料金で、12年度は10年度実績に比べて1か月あたり1049円(18.2%)増加すると試算していた。
ただ、当時はこの研究所が経産省OBの天下り先で、電力会社の役員も関与していたため、「原発を止めたら家計負担が増大するから、再稼働を急げと、国民を恫喝している」と、しんぶん赤旗などに叩かれた。
東電は枝野経産相から総合特別計画の認可を経て、2012年5月11日に家庭向け電気料金の値上げを申請した。上げ幅は平均10.28%と、10%を超えた。7月の実施を目指している。
東電はこの数字について、「12~14年度の3年間の、人員削減などの合理化による削減額を含んだ水準」と説明。また、柏崎刈羽原発の13年4月からの稼働も前提に算出しているという。
このため、柏崎刈羽原発が再稼働しないと、利益を生まないばかりか、維持するだけでムダな費用がかかってしまって、さらなる値上げの「要因」になる可能性もある。
さらに、火力発電にかかる燃料費も11年度第3四半期時点ですでに前年同期に比べて約4800億円増加。それに福島第一原発の廃炉費用や事故の損害賠償のための費用がのしかかってくるのだ。