お笑い芸人の有吉弘行さんがニーチェやカントといった哲学者たちの言葉を「毒舌訳」した書籍が話題だ。有吉さんにとって、哲学者は偏屈な「近所の厄介者」なのだそうで、偉大な哲学者たちを次々とぶった切っている。
2012年4月に発売された本で、タイトルは『毒舌訳 哲学者の言葉』(双葉社)。哲学に正解はないので哲学者が好き勝手言ったことも勝手にいいように解釈すればいいとし、有吉さんが自己流で偉大な哲学者の言葉を解釈し、説明している。
「こんなの、どん底知らないヤツが言うこと」
まず、ショーペンハウアーの「男性の間では愚かで無知な者が、女性の間では醜い女が一般的に愛され、ちやほやされる」という言葉は「女が合コンに連れていくのは自分よりブスと決まっている」。自分を優位にするために自分より下の人間を引き立て役に使うという手法で「常に世の中の真理です」とする。
有吉さんの力が特に入っているのが、お金に関係する言葉だ。サルトルの「貨幣は私の力をあらわす」という言葉に「なんだかんだ言っても、世の中、金です!」と強く同意。一方で、フランシス・ベーコンの「金は肥やしのようなもので、散布しない場合は役に立たない」という言葉には「甘い。貧乏したことないんじゃないのか、こいつ。(中略)こんなの、どん底知らないヤツが言うこと」と反発する。
有吉さんにとってお金は心の余裕なのだそうで、「貯金通帳見ながら、『いつでも散布できるぞ!』って思ってるのが一番強いですよね」と語っている。再ブレイクするまで苦労した有吉さんらしい言葉だ。
「この人、一生童貞だったんですよね」
近代哲学を強く批判し、現代思想の源流ともなったニーチェに対しても容赦ない。「なんじの敵には軽蔑すべき敵を選ぶな。なんじの敵には誇りを感じなければならない」という有名な言葉も「なんか言ってることが『少年ジャンプ』っぽい」「この人、一生童貞だったんですよね。やっぱ童貞の考え方ですよ」とバッサリ。
戦う相手としては絶対に勝てるという相手しか選んではいけないといい、「だから僕の場合、深夜のゆる~いバラエティ番組で、バカなアイドル相手にして、ひと言ふた言ツッコんで笑いを取るっているのが最高に効率のいい仕事です」としている。
一方、ニーチェの「若い頃からモテてきた男の想像力は犬以下である」という言葉については「モテない男のオナニーに賭ける情熱といったらすさまじいものがあります」「さすが、童貞のニーチェはその辺よくわかってますね。(中略)かなりの名言です。評価します」と称えていた。
ちなみに、ニーチェは売春婦に梅毒を移されたという説があり、童貞だったかどうかは微妙だ。しかし生涯独身だったことは間違いないようだ。
この本、結構売れているようで発売から3週間ほどで第2刷版が出ている。ネットには「こうゆう哲学書の読み方も『アリ』だなぁ、って思います。むしろ多くの人が思っているであろう、『ホンネ』を代弁してくれていると思う」といった感想が挙がっていた。