北極海「資源開発」に日本も参入 温暖化で「夢の新航路」も動き出す

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   氷に閉ざされた極北の海、北極海に各国が熱い視線を送っている。

   近年、氷が減り、夏は商船が航行できるようになり、航路として注目されるほか、資源開発の動きが目立つ。各国のせめぎ合いが激しくなる中で、日本も遅ればせながら動き出した。

スエズやパナマ経由より大幅に短縮

   北極海の魅力はまず航路。地球温暖化の影響で氷が溶け初め、8~9月には商業船舶が航行できるようになり、2009年からロシア北岸を通る「北東航路」の商業利用が始まった。

   これまで大西洋と太平洋を結ぶ主な航路といえばスエズ運河とパナマ運河経由。例えば、オランダのロッテルダム-中国・上海は、現在は1万2000マイルの航行が、北極海経由なら9300マイル。ロッテルダム-カナダ・バンクーバーは1万マイルが8000マイルと、航行距離にして30~40%節減、日数では30日かかっていたのが20日で到達できる計算になる。

   ロシアのプーチン首相(当時、現大統領)は昨年9月、北極海航路をスエズ運河に並ぶ「世界的な大動脈」に発展させると明言し、条件整備を関係当局指示するなど、航路での主導権を握ろうと躍起だ。

   もう一つが資源だ。米国の地質研究所(USGS)の発表(2008年)によれば、世界の未発見で掘削可能な原油の13%、天然ガスの30%は北極海にあるといい、本格的な科学調査が行われていないことを考えると、資源埋蔵量は実際にはさらに増えるとみられている。

   エネルギー資源だけではなく、金、ダイヤモンド、マンガン、ニッケル、コバルト、銅、プラチナなどの鉱物資源でも、世界でも有数の鉱床が北極海に眠っていると推測される。北極海はまさに「眠れる資源の宝庫」なのだ。

ロシアが先行、中国も活発

   南極大陸は特定の国が領土にして勝手に開発出来ないが、北極は氷が張っているだけで、経済権益については普通の海と扱いは同じ。沿岸12カイリは領海、200カイリは資源を優先的に利用できる排他的経済水域と認められる。

   沿岸国の中でもロシアは北極海大陸棚での石油開発に積極的に動き、世界最大のメジャー(国際石油資本)の米エクソン・モービル、イタリア国営石油ENIなど外資と相次いで合意している。

   ロシアは世界最大の産油国だが、主要産地の西シベリアの生産はピークを過ぎていることから、北極海の開発は至上命題。ただ、「大陸棚開発を独力で進める高度な技術と資金が足りないので、外資の力が必要」(エネルギー業界筋)ということだ。

   沿岸国ではないが、中国の動きも活発だ4月に温家宝首相がアイスランドを訪問。昨年秋にグリーンランド(デンマーク領だが高度な自治権をもつ)の自治政府の要人を招いてグリーンランド北部での中国企業による資源探査・採掘に向け協議を加速するなど、資源確保に動いている。中国企業が「観光開発」名目でアイスランドの土地を購入しようとして、アイスランド政府に拒否されたとも報じられた。

安全保障や環境破壊が課題

   日本も遅ればせながら資源獲得競争に参戦した。グリーンランド北東部沖の海底油田(水深100~500メートル)の開発に向け、独立行政法人「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」(旧石油開発公団)、国際石油開発帝石、出光興産、住友商事などが出資し設立した「グリーンランド石油開発」が入札(今年12月に1次入札締め切り)に参加する。落札できれば対象の鉱区(3万平方キロ)の76%の権益を得て、10年後の生産を目指す計画で、「日の丸」石油の確保が期待される。

   こうした動きと連動して、安全保障面の懸念材料も出てきている。ロシアのほか、カナダ、ノルウェーを含め「沿岸各国が自国権益確保のため、このエリアの軍備増強に動き始めている」(外交筋)。航行しやすくなれば、例えばロシアのバルト海からバルチック艦隊が北極海経由で太平洋に出てくるといったことも想定されるなど、今後、緊張が高まっていく恐れもある。

   もう一つが環境破壊だ。文字通り手つかずの自然が開発や船舶航行で荒らされれば、この海域にとどまらず、地球全体の生態系にまで大きな影響を及ぼしかねない。「経済的なメリットばかりに目を奪われていると、しっぺ返しを受けるかもしれない」と懸念する専門家は多い。

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