「職場のパワハラ」、この10年で6倍 厚労省「提言」で防止対策は進むのか?

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   厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」が2012年3月15日、「職場のパワーハラスメント(パワハラ)の予防・解決に向けた提言」を取りまとめた。

   職場のパワハラは全国的に増加傾向にあり、社会問題となっているにもかかわらず、企業などはこれまで具体的な対策を打ち出しにくかったとされる。果たして提言でパワハラ対策は進むのだろうか。

類型化して定義づける

   全国の労働局に寄せられた職場のいじめなどに関する相談は2010年度で前年度比10.2%増の約3万9400件。統計が残る2002年度に比べると実に6倍。パワハラは企業だけでなく、地方自治体などでも深刻化しているとされ、係長が部下に高額な飲食代を支払わせるなどのパワハラ行為を繰り返し、病気休業に追い込んだ熊本市のケースなどが明らかになっている。

   提言は、こうしたパワハラについて、「放置すれば、働く人の意欲を低下させ、時には命すら危険にさらす場合がある」と、企業などに取り組みを求めている。

   今回はパワハラを類型化して定義したのが最大の特徴だ。

   それによると、職場のパワハラとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える、職場環境を悪化させる行為」。上司によるいじめだけでなく、同僚や部下からの嫌がらせもパワハラとされる。

   また、パワハラ行為を明確にするため①暴行、傷害(身体的な攻撃)、②脅迫、暴言(精神的な攻撃)、③隔離、無視(人間関係からの切り離し)、④過大な要求、⑤過小な要求、⑥私的なことに過度に立ち入る個の侵害――と6つの類型も示した。

グレーゾーンの判断が難しい

   ちなみに、「セクシュアルハラスメント(性的な嫌がらせ=セクハラ)」の場合は、男女雇用機会均等法で「性的な言動で就業の環境を害すること」などと定義されている。各企業などはこの定義に基づいてセクハラ防止の取り組みを義務づけられていることで、具体的対策が浸透したとされる。今回の定義付けで「パワハラ対策もセクハラに一歩近づいた」(企業関係者)ことになる。

   ただ、先の熊本市のように、絵に描いたような明白なパワハラはごく一部で、「多くはグレーゾーン」(企業関係者)。業務上の問題で部下を叱責することが、指導や激励に当たるのか、嫌がらせやいじめに当たるのか、判断は難しいのが実態だ。

   今回の定義付けでパワハラ対策は進むのか。円卓会議でも、例えば6類型のうち、「過大な要求」や「過小な要求」などについては、それぞれの業界や企業文化でことなるため、線引きが難しいと認め、各職場で認識をそろえる取り組みをするよう求めているのが精いっぱい。また、セクハラは「被害者が不快に思えばセクハラ」ととらえられるが、「パワハラが同じようにとらえられれば、逆に上司が萎縮して、職場が混乱する恐れもある」(企業関係者)との指摘も根強い。

   それでも避けて通るわけにはいかないパワハラ対策。企業の現実の対応としては、社内規定や対応マニュアルを策定したり、新人、中堅、幹部など階層毎に研修を実施して徹底するといったことが考えられる。

   ある企業の人事・総務担当幹部は「セクハラ対策では弁護士にアドバイスを受け、社内規定を整え、研修の講師を頼む。環境ISO(国際規格)などの取得では専門のコンサルタントにお世話になっている。パワハラでも弁護士や社会保険労務士のセンセイにお世話になるのでしょうね」と話している。

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