人選が難航している東京電力の次期会長候補に、菅直人前首相の名前が「浮上」した。週刊誌「AERA」(朝日新聞出版)が取り上げたほか、ネット上でも最近ささやかれ始めていた。
福島第1原発の事故発生時の首相だった菅氏は、現在もブログなどで「脱原発」を説いている。菅氏の「浮上」は、実質国有化に向かう東電を生まれ変わらせることができるという期待感が影響しているのか、それとも単なる皮肉・冗談なのか。
「この際、お遍路の格好で東電に乗り込んではどうか」
2012年4月2日、「AERA」最新号(4月9日号)が首都圏などの書店に並んだ。関係記事の見出しは、「難航する東電次期トップ人事 菅直人がやるしかない」だ。
3ページにわたる記事では、6月に辞任する予定の勝俣恒久東電会長の後任について、民主党政権が経済人からの起用にこだわって人選を進めているが、複数から断られるなどうまくいっていない様子を伝えている。官僚OBの線も厳しいようだ。
そして、記事の終わりごろ、「窮余の策」として、政治家からの起用の可能性を指摘した上で、「(菅氏に)登板願うのも選択肢と考えられるだろう」と、菅氏の話を持ち出した。
菅氏が、原発事故の「最高責任者」だったことや、「持論の脱原発」への政策転換を果たせる好機だと指摘している。
原発事故の数日後に東電本店へ乗り込み、「撤退なんてありえない」とどなったというよく知られたエピソードを持ち出し、「再び乗り込んではどうだろう」と勧めている。
具体的に菅氏就任の可能性や待望論を指摘する声には、触れていない。人選の中心的政治家の「ブレーン」や東電債権者である銀行の役員、菅事務所のいずれもが、「無理でしょう」などと否定的な話をしたと伝えている。
「AERA」記事を受け、4月2日のツイッターでは、「(笑)面白いアイデアですね」といった反応が複数寄せられた。中には、
「この際、お遍路の格好で東電に(会長として)乗り込んではどうか」
と冗談めかした「提言」もあった。
AERA記事について、「(菅氏のくだりや見出しは)ネタ扱い」と受け止めた人も少なくなかったようだ。