日テレ系朝の情報番組「ZIP!」の人気犬2匹が、吠え声がうるさくないよう声帯手術を受けていたことが分かり、批判も相次いでいる。提供元の動物プロでは、テレビ出演目的の手術ではないと説明するが…。
ZIP!の番組では、「ZIPPEI(ジッペイ)」という白い毛並みの兄弟犬が毎朝出てくる。3歳になるシベリア原産サモエド犬だ。
「近所の苦情などから手術した」
2011年5月から始まった「スマイルキャラバン」コーナーで、2匹は交代で男性シンガーソングライターと全国を旅する。地元の人々と触れ合う2匹の様子がお茶の間で人気を集めている。
ところが、ネット上などで同時に、「全力で吠えてもかすれ声しか出ないね」などと違和感を指摘する声が相次いでいた。そして、週刊誌や新聞の報道で、2匹が実際に声帯手術を受けていたことが明らかになった。
これに対し、ネット上では、愛犬家らから「ひどい」「かわいそう」といった批判も相次いでいる。
ZIPPEIを提供した「ZOO動物プロ」の責任者は、取材に対し、次のように説明した。
「番組出演をお願いする前から、私どもとは別の飼い主が2匹に手術をしていました。病気ではありませんでしたが、大型犬で吠え声が大きいので、近所から苦情などがありました。そのままでは飼えなくなり、保健所に出して安楽死させるよりいいと考えたからだと聞いています。ですから、テレビ出演のために手術したわけではありません」
日テレから手術が起用条件にされたことはなく、たまたまだとした。兄弟犬の希望があり、キャラクターやビジュアルも検討して選ばれたという。
責任者はまた、「声帯部分切除」という手術をしたが、左右の声帯に切り込みを入れただけで、声帯そのものは切っていないとした。そして、確かに、声は響かないものの、吠えることはできるので、ストレスはないと強調した。日テレ側には、犬に負担がかかっていないことを説明したとしている。
とはいえ、手術でなく、吠えないようしつけることはできなかったのか。
「テレビ局は相当なイメージダウン」
この点については、「ZOO動物プロ」の責任者は、次のように釈明した。
「飼い主は、犬をたくさん飼っていて手が回りませんし、吠え声はコミュニケーションになっているので、しつけは難しい状況でした。飼い主がいないときに、寂しかったり、人が来たりすると吠えてしまうこともあります」
ほかの犬にも声帯手術をしていることは否定した。「吠える犬をとのオファーが多いので、切除する意味がなく、手術を推奨しているわけではないです」
動物愛護団体から問い合わせを受けたが、手術は安楽死を避ける方法として有効であることを説明して理解してもらったという。
ペットの事情に詳しいある獣医師は、取材に対し、病気でもない犬に対する声帯手術について疑問も示す。
「声をちゃんと出せなければ、人間でもストレスがたまりますし、寿命への影響はわかりませんが、犬にも影響があるのではと思います。法に触れる動物虐待にはならないと思いますが、日本では、疑いを持つ一般の人が多くなっていて、最近はほとんど手術がないはずです。ムダ吠えをさせないためには、しつけで済ますのが一般的でしょう。過去に聞いたことがある程度で、今回はまだやっていたのかと驚きました」
この獣医師は、日テレが声帯手術した犬を出演させたことの影響は大きいとし、「テレビ局は相当なイメージダウンになるでしょうね」と指摘した。
ある動物愛護団体関係者も、「結果として、手術した犬を出演させた形になったのは、あまり好ましくない」と話す。一方、飼い主が安楽死を避ける手段として手術を選んだことについては、「犬がかわいそうな気もしますが、1つの解決策かもしれませんし、難しい問題です」と言っている。