東京証券取引所と大阪証券取引所が2013年1月1日に経営統合し、「日本取引所グループ」になる。国内には名古屋、福岡、札幌にも証券取引所があるが、今のところこれら3取引所とも合流を否定している。
しかし東証ですら売買代金や新規上場の低迷に苦しむご時世。だからこそ大証との統合でもあるわけで、地方3証取の「耐久力」が注視されている。
地方3証取は「独立維持」の方針
東証と大証が経営統合を発表した2011年11月22日、3証取は相次いで独立維持の姿勢を打ち出した。名古屋証取の畔柳昇社長は、
「日本の3大経済圏の一角である名古屋に取引所は必要だ。今後も独立した取引所として活動する方針に変更はない」
と、従来からのスタンスを変えなかった。
福岡証取の福田秀俊専務理事は「九州の企業や投資家にきめ細かいサービスを提供しており、地域金融を担う考えは変わらない」。また、札幌証取の定登専務理事も「地方の証取として活用してもらえる方策を考える」と生き残りを図る方針を示した。
地方取引所が金融インフラとしてよく活用されれば、地域の活性化にもつながる。しかし、証券取引所の職員は公務員ではない。公的補助金を受ける「商工会議所」などとも肌色の違う法人の職員だ。国内には過去、他の地方都市にも証券取引所があったが、需要減などから東証や大証への吸収合併された。神戸と京都は大証に、広島と新潟は東証にそれぞれ吸収される形で2001年までに廃止された。
売買代金の減少続く
では、地方証取の経営の現状はどうか。株式会社化している名古屋証取はホームページで損益計算書を公表している。
それによると、2011年3月期に売上高にあたる営業収益は前期比26%減の14億5512万円。営業利益は56%減の3億4356万円。欧州債務問題などによる足元の商いの薄さを考えれば、2012年3月期はさらに下落トレンドをたどる可能性はある。
欧州問題のような一時的要因とは別に、地方証取はおしなべて上場企業数と売買代金の低迷に苦心している。東証などと重複上場するメリットが見いだせない企業が東証の単独上場に切り替える動きも後を絶たない。
ただ、名証の2011年3月期の実績で売上高(営業収益)に対する営業利益の割合は23.6%に上る。同じ期に東証が23.8%、大証が33.0%なので取引所として特別高いわけではないが、好調だった時のトヨタ自動車でも9%程度であり、高効率経営ではある。この辺りに地方証取の強気の根拠がありそうだ。
なぜ高効率なのか。東証幹部によると「東証のシステムを使っているため、システム投資が不要だから」。
東証などの取引所にとって最大の懸案であるシステム負担が軽ければ、確かに経営は安定する。しかし、例えば名証で2006年に年間8850億円だった売買代金は2010年に797億円と10分の1以下に激減。福岡、札幌も同様の傾向だ。下落傾向に歯止めがからなければ「強気」を続けられる保証はないとも言えそうだ。