TBSの「水戸黄門」が2011年12月19日に最終回を迎えるなど、お茶の間で長年親しまれてきたテレビ時代劇が今まさにがけっぷちに立たされている。
そんな中で加入者を伸ばしているのが、早朝から深夜まで時代劇を放送している「時代劇専門チャンネル」だ。視聴世帯数は2011年9月現在816.1万世帯に上り、有料放送としては屈指の人気チャンネルとなっている。
契約者の7割近くは50代以上
「時代劇専門チャンネル」は1998年に開局し、運営する日本映画衛星放送にはフジテレビ、ソニー、東宝などが出資している。フジを始めとする各局の過去の時代劇ドラマ、あるいは映画作品を専門的に放送しており、「鬼平犯科帳」や「暴れん坊将軍」、「必殺」シリーズ、さらには「花神」「国盗り物語」など、NHKの過去の大河ドラマが主な人気番組だ。スカパー!/スカパー!HD(CS)のほか、「ひかりTV」などの光回線やケーブルテレビなどで配信され、スカパー!での単チャンネル契約の場合料金は月額525円となる。
開局当初50万だった視聴世帯は右肩上がりに増加し、特にこの数年、地上波での時代劇番組が減るとともに驚異的な伸びを記録している。放送方法の拡大もあり、2010年からの1年余りで実に20%強、実数で100万世帯以上も増やした。
契約者を年齢別に見ると40代が17%、50代が25.9%、60代が41.9%で(ACR2010/MVP2010より)、やはりシニア層が中心だ。番組人気を計る接触率では、CSのさまざまな専門チャンネルの中でも、M3層(50歳以上男性)の首位をほぼ独占しており、女性の人気も高いという(ビデオリサーチ調査 CS専門チャンネル接触率調査による)。
「制作費の逼迫やクライアントのニーズもあって、いまは地上波で時代劇の制作は難しいのかもしれませんが、視聴者からの反響を見ると『やっぱり時代劇が見たい』という人が相当数いることを実感します。CMも、健康商品の通販などシニア向け商品のクライアントが多く、好評です」(日本映画衛星放送)
契約者増で同チャンネルでは過去作にとどまらず、すでにスカパー!などとの共同出資でオリジナル作品制作にも乗り出している。11月には第2作「鬼平外伝 熊五郎の顔」を、BSスカパー!で放映した。こんごも撮影所を維持し、時代劇を制作できるスタッフを確保しながら、自前の時代劇コンテンツを作り続けていくことも狙いと見られる。
地上波ではテレ東の深夜番組残すのみ
一方の地上波では「水戸黄門」終了後、テレビ東京が1月から深夜枠で放送する「逃亡者おりん2」が、時代劇「最後の砦」となる。主演の青山倫子さんは公式サイトで「『時代劇は本当になくしてはいけない』と思っています」と意気込むものの、3月の「おりん」終了後、時代劇の灯は続くか定かではない。
江戸文化に造詣が深く「お江戸ル(お江戸のアイドル)」として活動するタレントの堀口茉純さんは、「大の時代劇ファンとしては、古いドラマなどもまとめて観られる専門チャンネルは嬉しい存在」と話す一方で、時代劇が「好きな人しか見ない」ものになることが心配だという。
「これまではお茶の間で『水戸黄門』を見れば、着物など和の文化を身近に感じることができました。こうした世界観が、私たちに縁遠いものにならなければいいんですが」
なお、日本映画衛星放送によると、「水戸黄門」は時代劇チャンネルで再放送する話は今のところないという。