被災地がれき受け入れに抗議・脅迫1000件 佐賀県武雄市長「涙の決断」で見送る

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   東日本大震災の被災地で発生したがれきを受け入れる方針を表明した佐賀県武雄市に、非難の声が殺到している。市では、政府の放射線量基準よりも大幅に厳しい基準を独自に設定する考えだが、それでも批判の声が相次ぎ、中には「イベントを妨害する」といった脅迫もあった。その結果、市民の安全などを考慮し、当面は受け入れを見送ることになった。

   武雄市の樋渡啓祐市長は10回以上被災地を訪れており、2011年11月28日、復興支援の一環として、がれきを受け入れる方針を明らかにしていた。具体的には、市内にある清掃工場「杵藤(きとう)クリーンセンター」での受け入れを計画。ただし、この清掃工場は武雄市を含む3市4町でつくる「広域市町村圏組合」が運営しているため、12月6日に開かれる関係首長の会議で受け入れを提案することにしていた。受け入れが実現した場合、九州では初めてのケース。

独自基準設定でも「全然意見が噛み合わない」

がれき受け入れの見送りを表明する佐賀県武雄市の樋渡市長(ユーストリーム中継画面より)
がれき受け入れの見送りを表明する佐賀県武雄市の樋渡市長(ユーストリーム中継画面より)

   樋渡市長は、ブログで

「国の定める基準は、基準自体を信じていませんので、国の基準より圧倒的に厳しい基準を作ります」

とつづるなど、独自の基準を設けて、放射性物質が検出されないがれきのみを受け入れる方針を強調していたが、それでも市役所などに苦情が殺到。11月30日夜には、ブログで

「それでも、瓦礫(放射線まみれ)を受け入れてはいけないと、全然意見が噛み合ない」

と嘆いていた。

   翌12月1日の市議会本会議では、樋渡市長は、11月16日付けの河北新報(仙台市)の社説を引用。

「福島県内のがれきは県内で処理される。一方、宮城、岩手両県のがれきは放射性物質の影響は小さく、あきらかに『風評被害』と言える。被災地の痛みを分かち合ってもらえないものか」

と、目に涙を浮かべながら読み上げた。一方、これまでに1000件以上の意見や苦情が寄せられたことも明かした、その大半が佐賀県外からの批判だったという。中には、

「もし、お前たちががれきを引き受けるならば、その苦しみを、お前たち職員に与えてやる」
「武雄市が、市民が等しく楽しみにしている色々なイベントを、ことごとく妨害する」

と脅迫もあったという。すでに一部では、九州、佐賀県、武雄市のものを買わないように不買運動を呼びかけている人もいるという。

事件あれば「復興に向けて頑張っている人を傷つける」

   樋渡市長は、

「特に市民、職員に危害を及ぼすような予告があったことは看過し得るものではない」

としながらも、

「こういった予期せぬ事件が仮にあったとすれば、そういった被害を受ける市民の皆さん、ご家族、地域のみなさん、東北の復興に向けて頑張っている人を傷つけることになるという思いに達した」

として、12月6日の会議では提案を見送ることを表明。その上で、

「オールジャパンで、がれきの処理に対して東北を応援しようという機運に、日本人であればなってくると思う。条件が整った時に、市民、議会とよく相談した上で、提案していきたい」

と、環境が整うのを待ちたい考えだ。

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