大学生の学力低下が指摘されるなか、大学生・短大生の4人の1人が、日没の方向を「東」と答えていたことが明らかになった。また、地球の周りを回る天体として太陽を挙げた人も2割近くいた。この数値は小学生を対象に行った調査結果と大きくは変わらず、中高の理科教育の意義が問われることにもなりかねない。
実態が明らかになったのは、東海大学産業工学部(熊本市)の藤下光身(ふじした・みつみ)教授らが2011年4月から5月にかけて行った「短期大学生・大学生に対する天文基礎知識調査」。調査内容は、11年9月に鹿児島大学で開かれた日本天文学会の「秋季年会」でも発表された。
月が満ち欠けする理由についても正答半分
調査は国内の公私立の短大3校・大学2校を対象に行われ、天文学に関する基礎知識を選択式の問題を9問出題。1年生を中心に667人が回答した。調査を行う際の取り決めで、調査対象の学校名は明らかにされていない。
日没の方向を聞いたところ、正解の「西」と答えた人が75%で、「東」と回答した人が22%にのぼった。「南」「北」と答えた人も、あわせて3%いた。南半球で日没する方向を聞いと、正解の「西」は44%に低下し、「東」が37%に増加した。
月が満ち欠けする理由についても、「太陽・月・地球の位置関係」と正答できたのは56%で、「地球の影の影響」との回答が42%にのぼった。
「天動説」を唱える人も続出。人工衛星のように地球の周りを回る天体を複数回答で選んでもらったところ、「月」と回答したのは74%にとどまり、「火星」が33%、「太陽」が18%にのぼった。
小学生からほとんど成長せず?
実は、01年から04年にかけて、小学校4~6年生に対して同様の調査が行われている。調査では、約4割の子どもが「太陽は地球の周りを回っている」と考えていることや、太陽が西に沈むと理解している子どもが6~7割しかいないことが判明し、波紋が広がった。
当時の小学生は現在の大学生の世代にあたるため、今回の調査は、この世代がどの程度知識の面で成長しているかをみる狙いもあった。だが、中学校、高校を経ても知識レベルで大きく成長していることは確認できなかった形で、藤下教授は、
「正答率の低さは衝撃的」
と嘆息。
「若い人が、『どちらの方角から日が昇るか』といった、科学を意識しなくても生きていける現状があるのではないか。学生に『石ころが、だいたい何グラムか』『30センチはどのくらいの長さか』という質問をしても、とんでもない答えが返ってくることがある」
と、学校の理科の授業で習ったことと、自分が実際に生きている世界との断絶を指摘している。