大阪ダブル選の世論調査と取材を総合した各紙の「情勢調査」が出そろった。大阪市長選をみると、朝日、毎日、読売の3大一般紙が、橋下徹・前府知事のリードを伝える一方、共同通信などは「大接戦」と報じている。
大阪市長選に立候補したのは、現職の平松邦夫氏と橋下氏の2人だけだ。投開票は2011年11月27日に迫っている。果たして現状は、「橋下氏リード」か「大接戦」なのか。
朝毎読など「橋下氏リード」が多数
11月21日付朝刊に載った情勢調査では、朝日「橋下氏が一歩リード」、毎日「橋下氏がリード」、読売「橋下氏が先行」と、3大一般紙がそろい踏みで橋下氏優位を伝えた。約450~約940人の大阪市内の有権者から回答を得た結果だ。
平松氏に関する表現をみると、毎日と読売が「(平松氏が)追う」、朝日は「懸命に追う」となっている。
ほかにも、記事からは大阪市内の有権者から得た回答数は不明だが、日経新聞(21日付)が「橋下氏が一歩リード」、時事通信(20日配信)は「橋下氏がやや先行」と伝えた。
「やや」とか「一歩」とか不鮮明な表現が並ぶのは、公職選挙法が禁じている「人気投票の公表禁止」にあたる可能性を避けるため、告示以降は「●●氏に投票すると答えた人は●%」といった「全体の生数字」は表に出さず、「取材結果も総合した」形にしているためだ。「生数字」は、「社外秘」扱いにする社もある。
参考で、読売新聞の過去の情勢調査記事と比べてみる。11年春の統一地方選で、いずれも現職の「圧勝」で終わった東京都と北海道の両知事選の際(投票約1週間前)の表現をみると、「石原(都知事)が頭一つ抜け出ている」、「高橋(道知事)が大きく先行」となっていた。
今回の市長選では、読売は「橋下氏が先行」としている。「頭一つ」「大きく」といった表現が欠けた形になっている。
「橋下氏リードは僅か3ポイント」?
一方、共同通信(20日付掲載用配信)は「大接戦を繰り広げている」と伝えた。名前の出てくる順番は「橋下氏と平松氏」と橋下氏の方が先になっている。
ちなみに届け出順は平松氏の方が先だ。ある全国紙OBによると、「少しでもポイントが上の候補の名前を先に記事に登場させるのが普通」だそうだ。
産経新聞も20日付朝刊で「橋下氏と平松氏が激しく競り合う」と分析した。
週刊誌はどうか。週刊現代が今週号(12月3日号)で、「橋下徹 本誌調査ではやっぱり『圧勝』なのだが」との見だしで報じている。
「大阪の繁華街で大阪市民100人」にきいたところ、橋下氏が「ダブルスコア」だった、と具体的な数字を示して紹介している。
一方で、「不安材料」も挙げた。たとえば、「大阪維新の会の関係者」の話として、維新の会メンバーが行った調査では「橋下のリードは僅か3ポイント差」しかなかったとしている。
他にも、橋下氏の支持率が高い若年層や無党派層は一般的に投票率が低いことや、投開票日に雨が降るなどして投票率が低くなれば「(橋下氏にとって)致命的」との「橋下陣営幹部」の声にも触れている。陣営内に「橋下氏の人気の上滑り」を警戒する声があるというわけだ。
大阪市長選の期日前投票(告示翌日から7日間)をした人は、07年の前回市長選のときより約8割増となり、関心の高さをうかがわせている。