福島第1原発から出た低濃度汚染水の浄化水について、内閣府の園田康博政務官にフリージャーナリストらが飲むよう要求していたことが論議を呼んでいる。
「例えば、人が飲んでも大丈夫なレベルなんですか?」。きっかけは、あるフリージャーナリストが2011年10月10日の東電会見で、こう質問したことだ。
「飲ませてなんになるんだよ」と批判も
東電は、5、6号機に溜まった津波の海水などを浄化して、原発敷地内の山林で10月7日から散水を始めた。このジャーナリストは、山林にまくと除洗不可能になるうえ、浄化水が地下にしみたり、乾いて放射性物質が風に乗って飛んだりする恐れがあるとただしていた。
続けて、散水の水をコップで飲めないかと聞くと、東電側は、飲料水ではないとして飲むのを渋った。しかし、飲んでも大丈夫かという質問には、「そのぐらいのレベルにはなっていると思います」と明言した。
同じフリージャーナリストの寺澤有さん(44)は、この会見内容を知って、同様な質問を13日の政府・東電合同会見でぶつけることにした。「東京電力が『飲んでも大丈夫』って言ってるんですから、コップ1杯ぐらい、どうでしょう」。すると、質問された園田政務官は、パフォーマンスは否定したものの、浄化水を飲むことを約束した。
寺澤さんは、その後の経過をツイッターで逐次報告した。それによると、約束したことに驚き、会見後に「絶対飲まないほうがいいです」と園田政務官に進言した。しかし、その後のツイートでは、「飲みそうな感じ」「最後まで見届けよう!」「今日飲むのかと期待」と明かし、さらには「最優先の公務って、約束を守って『低濃度』とされる放射能汚染水を飲むこと」とまで言い切った。
こうした発言について、ネット上では、「安全だっていうなら飲ませるのが妥当だろ」などと擁護する声もあったが、「これは引くわ~」「大人げない」「飲ませてなんになるんだよ」と批判も相次いでいる。
「多くの情報を引き出せると思った」
相次ぐ批判について、寺澤有さんは、浄化水を飲むよう要求した理由についてこう説明する。
「低濃度と言いますが、どんな水なのかよく分かりません。飲むよう求めることで、なるべく多くの情報を引き出せるのではないかと思いました。逆に言うと、園田政務官が『飲む』と言ったことは、すごいチャンスになるわけです。つまり、体に悪く危ないということが分かり、飲まない方がいいという話になるのではないかということです。そのことを浮き彫りにしたかったため、敢えて質問しました」
東電の2011年10月25日の会見では、浄化水には、1リットル当たり2600ベクレルの放射性物質トリチウムが含まれていたと明かされた。これは、WHOの飲料水基準1万ベクレルを下回っているとされたが、EUが注意レベルとしている100ベクレルを超えており、寺澤さんは散水も難しいと主張。「飲むように言わないと、トリチウムは発表しなかったはず。その点で、意義があったと思っています」と語った。
しかし、結果的にトリチウムを含んだ水を園田康博政務官に飲ませてしまったことになる。この点については、「政務官は、役人から安全と言われ、うのみにしてしまったのでは。普通なら飲めないとなるのに、それは政務官の責任だと思います」としている。
コップの浄化水の残りは、分けてもらっており、これから分析してもらうという。ただ、「危ないですので、僕は飲みません」と言っている。
政務官の事務所では、賛否両論の声を聞いているとしながらも、要求に応えないと会見が進まなかったなどと説明する。
「フリーの方に危険だと言われ続けるより、立ち位置をはっきりさせた方がよいと考えました。不毛な話に一区切りつけるために応じたということです。『危険だから飲めないはず』と主張されたとしたら、それは悲しいことだと思います」