国内のスマートフォン市場が成長を続けている。携帯電話各社が2011年秋冬モデルとして投入した新型の端末も、主力はスマートフォンだ。
続々と増え続けるスマートフォンだが、日常的に長時間使うだけに消費者にとっては、性能面だけではない「使いやすさ」が求められる。
高スペックだから使いやすいとは限らない
調査会社MM総研によると、携帯端末によるウェブサイトの閲覧時間は、従来型の携帯電話が1日58分程度だったのに対して、スマートフォンでは同169分と3倍増となった。1日の中で利用時間の長いスマートフォンだけに、操作上に不具合が起きれば、今まで以上にイライラを感じるだろう。
スマートフォンの使用で生じるストレスの調査機関として発足した「スマホストレスラボ」の実験結果を見ると、スマートフォンの利用で感じるストレスに影響するものとして、回線の接続状態と、端末の操作性の2点が挙げられている。
ラボの発起人でITジャーナリストの神尾寿氏は、スマートフォンは「日常的な使いやすさ」が重要だという。端末の「使いやすさ」で重要な要素は、「性能」と「ユーザーインターフェース(UI)」の両方だ。高性能であることは大切だが、他機種よりも高いスペックだからといって、利用者が実際に快適さを感じられなければ使いやすいとは言えない。また、画面に触れてアプリを動かしながら操作するタイプのスマートフォンでは、マニュアルを読みこまなくても済む、直感的で分かりやすいUIが求められる。理にかなったデザインが施されているかどうか、スマートフォンによって差が出やすいと、神尾氏は説明する。
ストレスに関する実験で用いられたのは、米アップルの「アイフォーン(iPhone)4」、台湾HTCの「HTC EVO 3D」、韓国サムスン電子の「ギャラクシー(GALAXY)S2」の3機種。いずれもグローバルモデルで、実験当時に販売されていた中でも携帯電話各社の代表的な端末として選ばれた。神尾氏に聞くと、それぞれのつくりには、ストレスを抑えるための工夫が凝らされていると話す。
直感的で気のきいた操作性が評価点
今やスマートフォンの「老舗」となったiPhoneについて神尾氏は、「そもそもアップルは、iPhoneをつくるにあたって『直感的で分かりやすい』という方向性を最初に打ち出した」と話す。2011年10月14日に発売された最新モデル「iPhone 4S」にも、その方針は受け継がれている。そのiPhoneと並んでUIにこだわった端末が「HTC EVO 3D」だと神尾氏。
例えば通話ボタン。アイコン化すると見かけが他と同じようになって紛れる恐れがあるが、「HTC EVO 3D」では、画面下部中央にやや大き目に「電話」と固定表示されているため、どこにあるかが一目瞭然だ。また頻繁に使う機能はひとまとめにグループ化して配置されており、アプリの管理もしやすくなっている。「細かなところで気がきいており、iPhoneと同じく直感的に操作ができる」と評価する。
UIについて「スマホストレスラボ」では、3つの機種を無線LANに接続したうえでアドレス帳等の登録作業を行い、正しく登録できた数を比較した。結果は「HTC EVO 3D」が他の2機種を上回った。UIの優秀性が正しい登録数の多さにつながったのではないかと、ラボは分析している。
同じアンドロイド端末でも、「GALAXY S2」は処理スピードが速いため、動画のような容量の大きいデータも動作に支障がでにくい。
ストレスを感じさせないうえで、操作性と並んで重要なのが回線の「つながり具合」だ。3つの端末の中で「HTC EVO 3D」だけが、高速モバイル無線サービス「WiMAX」に対応する。そのせいもあって、「スマホストレスラボ」の実験では、JR山手線内での動画視聴の際、3G回線で接続した端末と比べてWiMAX接続の「HTC EVO 3D」はストレスを感じにくい結果が出た。実験を踏まえて神尾氏は、高速通信に対応する端末が、ストレス値を下げるのに有効だと言えるのでは、と考える。