テレビドラマなどを無断でネットにアップしたとして著作権法違反の疑いで投稿者が逮捕されるケースが相次いでいる。ユーチューブなどで無断投稿が絶えない中、なぜ逮捕までするのか。
摘発のきっかけは、警察の「サイバーパトロール」によるケースが多い。
警察「余罪が多いとみられる」
群馬県警の生活環境課などが2011年10月11日に秋田県内の無職男性(39)を逮捕したのも、そのケースだった。
調べによると、この男性は、10年12月14日にフジテレビに著作権があるドラマ「流れ星」を、この月24日には共同テレビに著作権があるフジ系ドラマ「フリーター、家を買う。」をそれぞれ無断で「FC2動画」に投稿した疑い。この年の10月ごろから、海外サーバーを通じてドラマなどの無断投稿を始めていた。
県警の捜査員が11年2月にパトロールで投稿動画を見つけ、フジなどの告訴を受けたうえで、男性から事情を聞いていた。この男性は容疑を認め、「感謝されるので、うれしくてやった」と供述している。フジ系ニュースでは10月12日、男性の逮捕を実名報道した。
パトロールによる摘発では、兵庫県警が9月28日、アニメをファイル共有ソフト「Share」に無断投稿していた小学校教諭男性(32)と無職男性(27)を、角川書店などの告訴を受けて著作権法違反(公衆送信権侵害)の疑いで逮捕した。このほか、奈良・富山両県警がこの日、匿名の情報を元に、アニメを「ひまわり動画」に無断投稿していた会社員男性(20)を、講談社から告訴を受けて同容疑で逮捕している。
ユーチューブなどの動画サイトでは、テレビ番組の無断投稿が相次ぎ、すぐに削除されるというイタチごっこが続いている。そんな中で、特定の投稿者に目をつける理由について、群馬県警生活環境課の次席は、こう説明する。
「余罪が多いとみられることが挙げられます。この男性の場合は、動画を無断で100本ほどもアップしていました。また、住所不定など犯罪につながりかねないケースもそうです。ドラマなどを販売していれば、もっと悪質とみなされます」
寛容とされていた角川書店も警察に告訴
告訴を受けても、任意捜査はありうるが、逮捕しなければならないときもあるとする。
「まず投稿本数が多いことです。また、直接事情を聞いたときの状況もあります。あいまいな供述をしていれば、証拠隠滅や逃亡の恐れがあるからです。この男性の場合もそうでした」
ただ、逮捕までするには、告訴がないとできないと群馬県警生活環境課次席は言う。それは、著作権法違反が親告罪であるからだ。
テレビ局などは、どんな場合に告訴に踏み切るのか。
フジテレビの広報部では、取材に対し、「詳細についてはお答えしておりません」とコメントするだけだった。
共同テレビでは、「投稿本数が多かったり、再三警告しても応じなかったり、悪質だと判断したときです。今回は、警察から要請がありましたが、自らの判断で告訴することもあります。不法な投稿については、厳しく対応すべきだと考えています」(権利開発室)としている。
一方、角川グループは、好意で宣伝してくれるファンを著作権法違反だとするべきでないと系列会社社長が過去に発言するなど、違法投稿に寛容な面もあるとされている。
しかし、小学校教諭男性のケースでは、警察に告訴していた。その理由について、角川書店の法務部では、次のように説明する。
「アニメなどの本編映像の違法投稿をOKしていたわけではありません。オープニングの歌やCMの告知などの映像を改変するだけに留め、作品への誹謗中傷ではなく愛があればいいのではと会長が言っていたわけです。男性のケースは、不特定多数に本編映像を見られるようにしており、一度アップされると無数に出回ってしまう危険性があるんですよ」