独立行政法人「国民生活センター」を廃止し、消費者庁に一元化する問題が宙に浮いた状態になっている。2011年8月末に政府が正式決定する見通しだったが、細野豪志・前消費者担当相が同26日の会見で、「第三者を含めた検証の機会を設ける」とし、引き続き検討を続ける考えを示して、結論を先送りしたためだ。
細野前担当相「双方の理解が不十分」と先送り
両機関幹部で作るタスクフォース(TF)はそもそも同26日、センターを2013年度に廃止して、消費者庁の内部部局と並列する機関「消費者庁国民生活センター(仮称)」を設立する最終案をまとめた。現在のセンター職員を庁のプロパー職員とし、新人も採用するほか、商品テストは新センターと庁が創設を目指す事故調査機関で分担して行う方針なども盛り込んだ。この案を受け、細野前担当相は同日中に最終的な判断を出して、一元化を正式に発表するとみられていた。
しかし、会見で細野前担当相は「一元化に向けた準備が整っているとはまだ言えない」「庁とセンターの双方の理解が十分でなく、理解が広がらないと一元化は難しい」と主張。これまでTFが15回にわたり協議してきた議論を横に置く形で、再度協議の場を作り、「しかるべき時期に判断する」とした。協議の具体的な進め方については明らかにしなかった。
一元化の議論は2010年12月、独立行政法人の見直し方針が閣議決定されたのを機に始まった。しかし、消費者団体などは「消費者からの相談にきめ細かく対応できなくなる恐れがある」「判断が遅れ、素早い注意喚起ができなくなるかもしれない」などとして、一元化に強く反発してきた。一元化の判断が先送りされた一因には、こうした反発を考慮し、「もっと議論を深めるべきだ」という考えもあったとみられる。
細野前担当相が会見した26日は、菅直人前首相の後継を選ぶ民主党代表選告示の前日で、5人が乱立するという代表選の構図が固まった日。「消費者庁とセンターの一元化議論どころではない」という空気でもあった。
そもそも消費者庁は発足からわずか約2年を経ただけなのに、担当相は細野氏で既に6人。「トップの腰がすわってない」という見方は多くの関係者に共通している。一元化先送りは、こうした環境の中で必然的に生じたといえる。
結局、7人目の新しい消費者担当相には山岡賢次氏が就いた。しかし国家公安委員長と拉致問題担当相という重責を兼務する上、「マルチ商法とのかかわりも指摘され、腰を据えて消費者行政に取り組むのか不安」「山岡氏にとって、消費者問題の重要度は低いのではないか」との声も少なくない。政府の消費者行政の腰がすわらない限り、一元化の行方もおぼつかない。