告発サイト「ウィキリークス」が最近公開した米外交公電の中に、「東京発」として2010年2月、当時の前原誠司国土交通・沖縄および北方対策担当相とキャンベル米国務次官補らの会談内容が含まれていた。
そこには前原氏が、当時民主党幹事長だった小沢一郎氏の名を挙げて、「相手によって発言内容を変える」とキャンベル氏に注意を促していたと書かれていた。懸案となっていた沖縄の普天間基地移設問題についても、かなり踏み込んだ内容に及んでいた。
「相手に合わせて発言する」
「前原発言」が掲載された公電は2010年2月8日付で、東京の米国大使館から発信された。「機密」扱いで、「2月2日、キャンベル国務次官補と前原沖縄担当相の会合について」との件名が付いている。暗礁に乗り上げていた普天間移設を中心に、両者が意見交換をしたようだ。
実は前原氏との会合の後、キャンベル氏はルース駐日米大使、グレッグソン国防次官補とともに小沢氏と会う予定になっていた。公電には前原氏が、小沢氏の「人物評」をした部分がある。そこには前原氏が、「小沢氏は相手に合わせた発言をするから、気をつけた方がよい」と助言した旨が明記されていた。
前原氏は、小沢氏が、当時連立政権を組んでいた国民新党と社民党に対して連立の維持を訴える一方、普天間基地を抱える沖縄に向けては負担軽減を強調していると指摘。そのうえで、小沢氏がキャンベル氏らと会った際には「日米同盟の重要性と、2010年5月までに普天間基地の移設に合意する必要性を強調するだろう」と話したという
翌2月9日、今度はキャンベル氏らと小沢氏の会合の内容を記した公電が発信された。それを見ると、前原氏の「予測」どおり小沢氏は、日米関係の重要性を確認。小沢氏は中国と強いパイプを持つと言われるが、この会合では「軍の影響力が中国国内で増大している点を憂慮しており、(場合によっては)日米両国が強い態度で中国に臨む必要がある」と述べたとなっている。
だが「今後の日本の政治の動き」というテーマについては、党幹事長という立場から「政府の政策を語る立場にない」とコメントを避けている。普天間問題についても、公電には記録されていない。前原氏の忠告は「空振り」に終わった感がある。
普天間問題の解決「防衛相がカギ握る」
普天間移設問題については、沖縄担当相だった前原氏が「雄弁」に語っていた。当時の鳩山由紀夫首相が、移設先について2010年5月までに決着すると明言していたが、前原氏は「連立を組んでいた国民新党と社民党に拒否権はない」とキャンベル氏らに説明。社民党の福島瑞穂党首に対してもそのことを明確に伝え、「移設先の案を出すように」と話したという。
一方、政府・民主党や国民新党の下地幹郎幹事長から出た複数の移設先案について前原氏は、決定の判断に当たっては「専門的な知識をもっているのは防衛省のみであり、北沢俊美防衛相(当時)がカギとなる役割を果たすだろう」と述べている。
しかし、ルース大使が「沖縄の情勢が停滞したままの現状はいつまで続くか」と質問すると前原氏は、「すぐには解決しないだろう」と厳しい見通しを伝えた。その理由として、沖縄県民は普天間基地の移設先が県外になるという期待を長らく持っており、2010年1月に実施された名護市市長選で、基地受け入れ反対派が当選したのもその表れだとした。また米国による沖縄振興策について、「沖縄科学技術大学」といった高等教育機関の創設を提案、米国から著名な研究者を招き、有能な学生を呼び込むことを挙げている。