野田どじょう内閣・執行部は、「貝」のように口を閉じようとしているのか。失言大臣の辞職を受け、「報道との付き合い方」の見直しを求める声が幹部らから上がり始めた。
民主党の輿石東・幹事長は2011年9月12日の会見で、鉢呂吉雄・前経済産業相の辞任について「報道のあり方について、皆さん自身、もう一度考えていただきたい」と記者らに注文をつけた。「報道へのけん制」(時事通信)と受け止めた社もあった。
野田首相、官邸ぶら下がり取材応じず
輿石氏が報道に不満を持っている理由のひとつには、「オフレコ発言」として報じられた鉢呂発言の言い回しが各社で異なっていることがある。
「放射能をつけちゃうぞ」(朝日)、「『放射能をつけたぞ』という趣旨」(毎日)、「ほら、放射能」(読売)といった具合だ。輿石氏は事実関係を調べる考えを示し、12日には発言をいち早く報じた民放の関係者から国会内で話を聞いた。
さらに不満の背景として、非公開を原則としている「オフレコ」の内容が報じられたこともあるようだ。記者とのオフレコ懇談の見直し論まで幹部らの間で浮上している。会見以外は取材に応じない、という可能性もあるのだろうか。
藤村修・官房長官も9月11日の会見で、「今後の報道との付き合いも、少し検証しないといけないと聞いている」と述べた。
肝心の野田首相も、就任会見以降は会見を開いておらず、官邸ぶら下がり取材にも応じていない。東日本大震災発生から半年の節目である9月11日も会見は開かなかった。視察の際に短いぶら下がり取材に応じたことはあるが、少なくとも情報発信に熱心とは言い難いようだ。
9月12日には、首相ブログ「官邸かわら版」を開設したが、例えば産経新聞(9月13日付朝刊)は、「首相の発信『ご都合主義』」との見出しで、「どうやら『記者の質問』が嫌いなようだ」などと皮肉っている。野田首相の発信は一方的だ、というわけだ。
情報発信と「国民の支持」の関係
輿石氏らの「報道へのけん制」に対しては、自民党の石原伸晃幹事長が9月13日の会見で、「(鉢呂氏の発言は)オフレコとかオンレコ以前の問題」と、問題の矛先をマスコミへ向けようとする姿勢を批判した。
「民主党政変 政界大再編」などの著書がある元毎日新聞記者で政治評論家の板垣英憲氏にきいてみた。
「ドロからちょっと顔を出したドジョウが、早くもドロの中に潜ろうとしているように見える」
板垣氏はこう指摘し、輿石氏らの動きは、発足時から情報発信に及び腰だった野田体制の姿勢を一層後ろ向きにするものだ、と懸念を示した。
鳩山・菅両氏が首相在任時、発言の軽さから批判を浴びたことから情報発信に慎重になっているのだろうか。
「情報発信に後ろ向きの姿勢を強めれば、国民の支持はどんどん離れていくでしょう」
一方で板垣氏は、オフレコルールは政治取材にとって重要だと考えているそうで、今回の鉢呂氏の「放射能」発言を報道したマスコミ各社の姿勢に疑問も呈している。オフレコ取材をめぐっては、「一切オフレコを認めるべきではない」という意見から、「例外的に問題発言は報じるべきだ」、「オフレコの約束は守るべきだ」といった見解まであり、様々な考え方が示されている。
民主党は「報道との付き合い方」について、どんな答えを出すのだろうか。