東京電力が原発事故の本補償の手続きを開始し、個人向けの補償金請求の書類一式を、仮払いを受けた約6万世帯に発送した。
しかし、請求のための申請書類は約60ページの冊子で、内容も複雑。「賠償する側という意識はあるのか」「いやがらせのような分量の多さ」といった批判が上がっている。
3か月ごとに書類作成が必要
東電が2011年9月12日に発送した封筒を覗くと、同意書、補償金請求書、各種証明書類といった書類が入っている。中でも目立つのは「補償金ご請求のご案内」と書かれた156ページの分厚いマニュアルだ。そのうち約100ページは、「一時立入費用」「生命・身体的損害」「就労不能損害」など、請求対象となる損害ごとの記入方法の解説だ。
仮払い補償金の申請書類は非常に簡素なものだったが、今回は領収書、証明書の添付のほか、細かく算式を記入する必要がある。たとえば「就労不能損害」の場合には、自身の雇用形態を4つタイプから判定したうえで、それに沿った証明書類を用意し、補償金の金額を算定しなくてはならない。ページを行ったり来たりで、骨の折れる作業だ。
申請書は請求者1人につき1冊。しかも今回は3月11日~8月末が対象で、それ以降は3か月ごとに同じ書類を作成する必要があり、申請者の負担は大きい。
漏れなくすべてを記入するのも難しそうだ。東電では対策として、補償相談センターに約200人の担当者を設置し、手続きがわからない人のためには現地で説明会を実施するという。
東電は、申請から支払いまでは最低でも1か月かかるとしている。記入漏れがあった場合は、記入し直しとなり、さらに時間がかかる。また、東電からの賠償額通知に同意できない場合には、原子力損害賠償紛争解決センターに和解仲介を申し立てることにもなる。
「めんどくさい」「心が折れそうになった」
ツイッター上では早速、東電から書類の届いた被害者の声が上がっている。福島から埼玉に避難しているある女性ユーザーは、「東電から補償金の請求書類が届いた。一人一冊って…。説明書も分厚くて…。嫌がらせ?めんどくさい」と不満を顕わにする。
福島県大熊町から避難しているという女性は、「東電補償金の資料がきた。大量過ぎて頭がこんがらがる。読むのが面倒いくらいだ」と混乱気味。書類を見て「ちょっと心が折れそうになった…」というユーザーもいた。
福島県川内村から避難しているという女性は、分厚い説明書や書類の多さに驚きを隠せない。「保険の手続き書類に似ている」とし、「これを読んで記入するなんて、村の高齢者のほとんどは無理だろう。代行業者とか、代行詐欺が出るのではないか」と心配する。
続けて、「支援、補償関係の手続きは、本当に面倒くさい。福島県の健康調査、3月11日から25日までの記録を提出したが、ダンナとふたりでメモを見ながら書いていっても、思い違いがあったりする。こういうこともあるかとメモつけていたわが家ですら、ダメダメ」と書類作成の苦労を語っている。
ジャーナリストの須田慎一郎氏は9月13日放送のテレビ朝日系「ワイドスクランブル!」で、「被害者にしわ寄せを持っていくなんておかしいんですよ」「東電の社員が1軒1軒まわって聞き取り調査をするなりして書類を書くべきであって、(被害者に)負担を求めるというのはどう考えたっておかしい」と批判している。