「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社の教科書の採択をめぐり、沖縄県の八重山地方で異例の事態が発生した。地区の「協議会」が、一度は育鵬社の公民教科書を選定したものの、協議会を構成する自治体の教育委員会のひとつが不採択にした。
その後、県の教育委員会の提案で、自治体の教育委員全員の協議で決められることになり、結局不採択が決まったのだ。地元メディアは、不採択を歓迎しているが、「つくる会」を後押ししてきた産経新聞は「ゴネ得」などと決定のあり方に批判を強めている。
8月23日に賛成5、反対3でいったん採択決定
問題が起こっているのは、八重山地方の石垣市、与那国町、竹富町の3市町村で12年度から4年間にわたって使用される中学校の公民教科書の採択作業だ。この3自治体は共同で教科書の採択を行っている。教科書無償措置法では、共同で採択する場合は、その地域で同じ教科書を採択することが義務づけられている。
3自治体の教育長らでつくる「八重山採択地区協議会」は2011年8月23日、賛成5、反対3で育鵬社の公民教科書を採択することを決定。石垣市と与那国町は協議会の決定通りに採択したものの、竹富町の教育委員会は8月27日、「協議会の進め方に問題がある」などと全会一致で不採択を決定。東京書籍の教科書を採択した。
なお、育鵬社の教科書をめぐっては、
「考えが復古的で、国際協調や平和への努力よりも、中国の脅威を強調し軍事抑止力を前面に掲げているのが特徴だ。基地の負担軽減を求める県民の願いにも触れていない」(8月26日、沖縄タイムス社説)
と、地元では根強い反発がある一方、東京書籍版は
「憲法の平和主義を評価。公共の利益を政府が一方的に判断して個人の人権が制限されてはならないとするなど、育鵬社版とはだいぶ趣を異にする」(9月9日、琉球新報社説)
と、県内では評価が高い。