「原本廃棄するので複製ではない」 自炊代行業者回答に出版社側反論

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   本をスキャンして電子化する「自炊」の代行業者が、著作権侵害を問う大手出版社の質問書に対し、サイト上で公開回答して話題になっている。どうやら、電子化を進めない出版社側に責任があると言いたいようなのだ。

   自炊代行については、講談社などによると、ニーズの高まりから、現在は約100社にも増えた。しかし、こうした電子化ビジネスは、著作者の許諾を得ておらず違法だとして、大手7社が2011年9月5日、作家や漫画家ら122人との連名で、これらの業者に質問書を送っていた。

うまく返したのか開き直りなのか

出版社への皮肉?
出版社への皮肉?

   これに対し、業者のうち1社の「自炊代行ドットコム」がサイト上で、質問書について長文で公開回答を行った。その内容から、事業の正当性を訴えるのが狙いとみられる。

   公開回答では、電子化に当たっては、違法とされる「複製」をしているのではなく、電子データに「交換」しているだけだと独自の主張を展開した。その根拠として、電子化した原本は、受注者に返さずにすべて廃棄していることを挙げた。つまり、本をそのまま電子化しただけと言いたいらしい。

   データの不正流出については、身元を明かす受注者では考えられないと指摘。むしろ、闇で行われている複製こそ問題にすべきだとしている。

   そして、すでに購入した本は自炊しか電子化する方法はなく、「適正な代行業者」の必要性を訴えている。

   とはいえ、許諾していない作家ら122人については、電子化しないと明言した。ただ、質問書には、作家らの署名・捺印がないとして、「正式な連絡」を求めている。

   この公開回答は、ネット上で話題になり、はてなブックマークが300以上も付いている。そのコメントには、「これはいい皮肉」「うまくかえしたなー」と感心する声から、「開き直りにしか見えない」「免罪にはならないのでは?」といった疑問まであり、論議になっている。

講談社の広報室は「詭弁です」

   出版社側は、自炊代行ドットコムの公開回答について、どのように見ているのか。

   講談社などでつくる出版7社連絡会では2011年9月9日、公開回答を受けて対応を協議し、次のような公式コメントを発表した。

「著作権者の許諾のない、いわゆる自炊代行行為は、すべて違法です。これは、今回質問書を提出した作家、漫画家122人に限るものではありません」

   つまり、どんな手段を講じようが、許諾がない以上は、あらゆる自炊代行は直ちに止めるべきだということだ。これは、作家らの署名・捺印を求めるべくもないとしている。

   この立場から、複製ではなく交換だとの主張について、連絡会の窓口になっている講談社の広報室では、「詭弁です」と言い切る。それは、原本を破棄しようとも、複製には変わらないからだという。

   手元の本は自炊するしか電子化できないことについては、広報室では、「業者に頼らずに自分でする分には構いません」と言う。代行業者そのものについては、電子化された本にコピーガードが入るシステムがない以上は、たとえ利益還元があっても認められないと言っている。

   電子化を巡っては、ネット上で、122人のうちの一部に電子書籍を出していなかったりする作家らがいるとの指摘がある。講談社では、この点について認めながらも、現行書籍2万点のうち1万5000点ほどは電子化しており、12年夏にはほぼすべてで電子化するなどと説明している。

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