大阪府が、未成年者に対する性犯罪で刑務所に服役した人について、出所後に住所などの届け出を求める条例の制定を検討していることが明らかになった。
全国でも例がない取り組みで、人権上の問題点を指摘する声も出そうだ。だが、韓国ではGPS(全地球測位システム)付きの「足輪」着用を義務づけるなどのさらに踏み込んだ対策を実行しており、ある程度の成果をあげているようだ。
出所者が子どもに「声かけ」をすることを規制
2010年に大阪府内で起こった18歳未満への強制わいせつ事件は440件で、全国で一番多い。このことから、橋下徹知事は、2011年9月6日、
「子どもに対する性犯罪は再犯率が高い。子どもの安全については、行政が介入しないとどうしょうもない」
と危機感を表明。条例案への理解を求めた。
条例案では、出所者に対して、名前や住所、連絡先を府の機関に届け出るように求めるほか、出所者が子どもに「声かけ」をすることを規制するなどする。届け出を義務とするかどうかは、今後有識者の意見を聞いて検討し、12年2月議会への提案を目指している。
橋下知事は、3月にはGPS端末の装着を義務づける条例の制定について言及していたが、人権上の問題から、今回は断念した。宮城県の村井嘉浩知事も、11年2月に同様の考えを表明していたが、直後に東日本大震災が発生。事実上「棚上げ」状態になっている。
韓国では08年10月から「電子足輪制度」
では、実際にGPS端末の着用を義務づけている国の状況はどうなのか。韓国では08年10月から「電子足輪制度」を施行。13歳未満の子どもに対して性犯罪を行った人は、裁判所の命令で最長5年(後に最長30年に延長)、片方の足首に足輪の装着が義務づけられる。足輪はウレタン製で重さは80グラム。完全防水だ。
出所者の位置は、法務省の中央管制センターが24時間体制で監視・記録し(1)被害者に接近していないか(2)決められた時間以外に外出していないか、などについても監視する。
施行からの2年間で800人以上電子足輪を装着したが、性犯罪での再犯は1人。再犯はある程度抑止されている様子だ。
だが、世論の高まりを受け、さらに厳罰化が進んでいる。10年7月からは、裁判所から身元公開命令を受けた人については、写真や身体情報などの情報をウェブサイトで公開しているし、11年7月には、子どもに対する性犯罪者のうち、性的衝動や欲求を抑えられない者に対して、性欲を抑制する薬物治療や心理療法を命じる法律が施行されている。
この法律は、いわば「化学的去勢」とも言われるもので、当初08年に法案が提出された際は、「人権侵害」などと異論が続出。成立の見通しが立たない状態が続いていた。だが、10年6月、小学校2年生の女の子が小学校から拉致されて性的暴行を受ける事件が発生し、厳罰化を求める声が急増。これに応える形で、国会が異例のスピードで法案を可決したという経緯がある。