中国四川省成都市にある原子力研究施設で、火災が発生した模様だ。中国国内の民主化運動推進派が運営するブログでは、施設と見られる建物から黒煙が上がる様子を写した動画や画像が紹介されている。
原子力施設の火災を伝えたのは、「中国ジャスミン革命」というブログだ。中国で民主化運動に携わるグループが運営している。
「ひどいにおいが充満」「汚染が怖い」
2011年8月22日、「成都の原子力研究施設で火災」と題したリポートを掲載した。それによると、原子力研究院に付属する「原子炉工学研究所」で、8月21日の午後12時半ごろに出火し、強くて鼻につく刺激臭の黒煙が上がったという。
ブログではさらに、火災の様子を撮影した複数の画像、動画を紹介している。写真を見ると、コンクリート製の建物から真黒な煙が大量に出ているのが分かり、写真によっては建物の屋上に緑色のタンクのようなものも確認できる。いずれも、中国のミニブログサービス「新浪微博」に寄せられたものだ。写真には投稿者のコメントが付けられており、
「原子力施設で火事が起きたみたい。ひどいにおいが充満している。とても恐ろしい」
「私は原子力施設の宿舎に住んでいるが、(放射能)汚染が怖い」
と生々しい様子が綴られている。臭気については「プラスチックが燃えたような」と表現する人もいた。また施設近くの路上を撮った写真には、警官の姿があちこちに見られた。
別の角度から撮影された動画は、建物の間から猛烈な勢いで噴き上げる黒煙を写しだした。煙の近くには激しい炎も見える一方、人の気配はない。
見る限りでは確かに相当な煙だが、これだけでは施設内のどこが燃えたのかは分からず、まして原子炉が被害を受けたとは言い切れない。この一報の後、ブログでは火災について伝えておらず、被害の規模や原子炉への影響といった情報は不明なままだ。中国国内の主要メディアも報じていないという。
7月には原子力潜水艦「事故情報」が飛ぶ
中国語のオンラインニュース「大紀元」によると、成都の原子力施設は1965年、中国唯一の実験用原子炉として建設された。火災が起きた当日は、ジョー・バイデン米副大統領が成都を訪れて午後から四川大学で講演を予定していたため、警察当局も予期せぬ火災に神経をとがらせていたとの成都市民の声を、記事では紹介している。地図で見ると、原子力施設から四川大学までは、車で10分程度のごく近い距離にある。
原子力政策を積極的に押し進める中国では、福島第1原発の事故後もその姿勢を崩さず、8月7日には広東省深セン市で原発1基の新規稼働がスタートした。一方で7月下旬には、遼寧省大連市に停泊していた原子力潜水艦から放射性物質が漏れ出したとの未確認情報が、ネット上を駆け巡った。ネットでは関連ニュースが削除されるといった処置が講じられた模様だ。
原子力施設の火災も潜水艦の放射性物質漏れ疑惑も、公式な発表は出ていない。