橋下徹大阪府知事が率いる地域政党「大阪維新の会」が、大阪府議会などに公務員リストラの条例案を提案することが分かり、論議になっている。
君が代斉唱で起立を義務づける大阪府の条例が2011年6月に成立すると、橋下徹知事は、従わない教職員を処分する条例案を作ると明言してきた。
職務命令3回違反で懲戒免職の対象
そして、大阪府守口市長選で8月7日、大阪維新の会が推薦した候補者が当選を決め、いよいよ強気のカードを切ってきた。マスコミ各社に9日、公務員の懲戒・分限免職の規定にまで踏み込んだ条例案を、大阪府と大阪・堺両市の9月定例議会に議員提案するという情報が流されたのだ。
それによると、教職員が職務命令に3回違反した場合は、懲戒免職の対象になる。これは、君が代の起立斉唱ケースも念頭に置いているようだ。また、組織再編で余剰人員が出た場合に分限免職できる規定も盛り込む。維新の会が唱えている大阪市営地下鉄の民営化や、定員割れした府立高校の統廃合などが、ターゲットに入っている可能性がある。
さらに、教職員の降任や、民間並みの能力給導入なども盛り込まれる。ただ、このままでは、公務員の身分保障がなくなるのにストなどの争議権がないことになる。そこで、第三者機関の監察委員会を設置し、教職員が懲戒免職などへの異議申し立てできるようにするとされている。
このニュースが流れると、2ちゃんねるなどネット上では、その是非を巡って論議になった。「スト権は与えないが、民間並みにクビ切りするってのは 法的に問題ないのか?」「医療現場崩壊と同じ運命を辿りそうな予感がする」といった疑問もある。しかし、「日本最大の利権団体に斬り込むなんてやるじゃん」「実行できたら橋下の実績は最強になるな 総理大臣まで一直線だろ」などと賛辞はかなり多いようだ。
総務省「条例案まだなのでコメントできない」
一方で、教職員の労働組合では、橋下流の公務員リストラに反発を強めている。
連合系の職員労組「大阪府労働組合連合会(府労連)」では、書記長が、条例案はまだ見せてもらっていないとしたうえで、「報道通りなら、けしからんことだと思います。府知事・大阪市長のダブル選に向けたパフォーマンスと違いますか」と批判した。
現行の分限免職指針などを超えるような処分がなされれば、問題だという。
「組織改変は毎年やっていますが、専門職ばかりでなく、行政職も対象になるのでしょうか。行政職なら、異動すればいいだけなのに、なぜ分限免職にするのか疑問ですね。民営化したとしても、行政のほかの仕事に回るのが普通だと思います。危機感を感じながらでは、府民に向いた仕事ができません。上司にごまをすったりして、仕事にならないですから」
また、職務命令に3回違反したら懲戒免職の対象になることについては、「例えば、教職員が君が代斉唱で起立して横を向いたときはどうするんでしょうか」と疑問を呈した。
さらに、スト権の代わりに第三者機関を設置することについては、こう首をひねる。
「維新の会は、民間と同じ人事体系にすると言っていますから、民間並みにスト権があることも前提になると思います。民間では、第三者機関のような制度はないので、おかしいのではないですか」
もっとも、こうした主張も、改めて批判に晒される可能性がありそうだ。
総務省の公務員課では、「まだ条例案が出てきていませんので、今の段階ではコメントできる立場ではありません」とだけ言っている。