東京電力の福島第1原発などで働く作業員の日給は、何重にも「ピンハネ」されていた。東電が支払っている日給は1人当たり10万円程のケースが多いが、それが下請け、孫請けに5次、6次とピンハネされ、少ない人だと8000円という30代男性もいた。
日弁連は2011年8月4日に都内で「原発労働問題シンポジウム」を開き、日当の実態を公開した。実際に原発で働く作業員もシンポジウムに出席し、その実態を説明した。
何層もの下請け会社が関与
原発事故が起きた現場は放射線量が多いなど非常に危険が伴うため、それに見合った日当が出るのが当然だ。ネットでは原発事故が起きた当初は、「日当20万円の募集が出た」などと騒ぎになった。
日弁連によると東電の支払いは1日10万円が多いが、何層もの下請け会社が関与して、その段階ごとに手数料が引かれていく。最終的に1万円から1万数千円になるという。ある30代の男性は8000円、別の男性の日当は1万5000円だった、
なぜ10万円の日当が8000円になってしまうのだろうか。東京電力広報によると、
「1人当たりに用意する日当の金額は公表できませんし、また、作業員が受け取る金額については、下請け会社と作業員の契約のためこちらではわかりません」
ということだった。
東電や国に対して改善を求める
日弁連の貧困対策本部委員で、今回のシンポジウムの委員である三浦直子弁護士によると、作業員に日当が支払われるまでのプロセスは、まず東電が子会社に渡し、その子会社が下請けの会社に作業を依頼。さらに下請けが孫請けに作業を依頼し、それが4次、5次と続き、7次請けまでいる場合もあるという。下請けがそれぞれ手数料をピンハネするため作業員に渡す日当は減っていく。一般の派遣会社では考えられない構造で、これが危険な現場ならではの特殊な形になっているという。
下請け、孫請けは地元の会社が多く、地域のためにお互いが支え合う、こうした構図が出来ている面もあるのだという。
「作業員の中には別の会社で正社員を続けていたが、手取りが少ないので原発を選んだ30代の男性もいる。しかし、危険度を考えると今の日給では少なすぎる。私達はこうした実態を正常化するように、東電に対してはもちろん、国に対してもきちんと声を上げていかなければならない」
と三浦弁護士は話していた。