原発から80キロの白河市で高濃度汚染  肉牛「ホットスポット」問題深刻化

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   放射性セシウムに汚染された福島産牛肉のケースがまた見つかり、ネット上では、出荷禁止などを求める厳しい声が上がっている。こうしたケースが相次ぐ背景には、後手後手に回る政府のずさんな対応があるようなのだ。

   農家が汚染牛を出荷した浅川町は、福島第1原発から南西へ60キロも離れている。北に25キロにある南相馬市のケースに比べて、倍以上遠い。

野ざらしのまま水田に保管してセシウムに汚染

ホットスポットだった?
ホットスポットだった?

   ところが、農家の肉牛が食べた稲わらから検出されたセシウムは、より高濃度だったのだ。南相馬市では、規制値の60倍の1キロ当たり7万5000ベクレルが検出された。これに対し、浅川町では、それを上回る73倍もの9万7000ベクレルだった。

   しかも、稲わらは、さらに80キロも離れた白河市の農家から購入したものだった。福島県の畜産課によると、稲わらは秋に収穫して倉庫に保管することが多いが、白河市の農家は2011年3月11日の震災発生後も4日間以上、野ざらしのまま水田に保管してセシウムに汚染された。

   当時は、福島県などで葉物野菜の汚染が分かり、国も19日になって汚染されたエサを使わないよう通知していた。しかし、原発から離れた白河市では、なかなか認識しづらい状況もあったようだ。

   南相馬市のケースでは、農家が野ざらしの稲わらを牛のエサに与えながら、県には震災前に収穫したとウソの申告をしていた。しかし、浅川町のケースでは、農家がまさか汚染されているとは知らなかったという。

   とはいえ、ネット上では、相次ぐ汚染牛肉の発覚に厳しい声が相次いでいる。浅川町の農家から42頭が出荷され、首都圏でも食肉処理されたという時事通信の7月15日付ヤフー配信記事には、福島県産牛の殺処分まで求める過激な書き込みも出ているほどだ。

   なぜ原発から遠い白河市でも、稲わらの汚染が進んでいたのか。

後手後手に回る政府の対応

   それは、原発から離れていても、局地的に高い線量になる「放射線ホットスポット」の可能性があるからのようなのだ。

   微粒子の大気拡散に詳しい群馬大の早川由紀夫教授(火山学)は、ブログなどで、ホットスポットの放射線地図を公開している。それを見ると、白河市は、南相馬市と同じぐらい線量が高いホットスポットになっている。この地図をもとに、元原子力安全委員会専門委員の武田邦彦中部大学教授は、2011年5月10日付ブログで、原発からの放射性物質は、「福島から南下した気流に乗って二本松市、郡山市そして白河市まではある程度放射性物質が来ている」のではないかと推測している。

   エサの稲わらについては、原発から140キロも離れた宮城県の登米・栗原両市で、規制値の2.7~1.2倍になるセシウムが検出されたと、県が7月15日に発表した。早川教授の放射線地図で、両市を見ると、南相馬市などほど濃度は高くないものの、ほぼホットスポットに当たっている。断言はできないものの、こうしたホットスポットで、汚染が進んでいる可能性はありそうだ。

   南相馬市のケースを受けて、厚労省などは、福島県の計画的避難区域と緊急時避難準備区域について、出荷する肉牛の全頭検査をする方針を示した。しかし、この方針は、ホットスポットについては、何の考慮もないものだった。結局、厚労省は15日、浅川町のケースを受けて、さらに範囲を拡大する方針を示さざるを得なくなった。

   一部報道によると、政府内では、福島産肉牛の出荷を禁止する案も浮上しているという。とはいえ、対応が後手後手に回っているのは否めないようだ。

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