東日本大震災で仙台空港が津波にのみ込まれたことは記憶に新しいが、「羽田空港は仙台空港よりも危険」という研究が英国で発表された。どの程度危険なのだろうか。
研究は、ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)博士課程で地理を専攻するマット・オーウェン氏が再保険会社のJLT Reのために行い、2011年7月11日、ロンドンでその内容が発表された。
太平洋岸がもっとも津波のリスクが高い
同日、英科学雑誌のニュー・サイエンティスト誌(電子版)が報じた。なお、同誌は、査読を経ていない論文が掲載されるため、信ぴょう性の点から疑問符が付けられることもある。
研究では、米海洋大気圏局(NOAA)のデータベースを活用。世界中で起きた津波の数と大きさ、その原因となった地震の頻度などを調べた。その結果、さまざまな沿岸地域での津波のリスクを比べることが可能になり、その中で、太平洋岸がもっとも津波のリスクが高いことが分かったという。
その上で、空港がある10の沿岸地域について、(1)記録が残っている限りで、その地域が受けてきた津波被害の大きさ(2)津波発生の頻度、の2つの項目について1~5の点数で評価。その結果、羽田空港が両方の項目で最悪の5と判定された。
なお、実際に津波にのみ込まれて民間路線が復旧するまでに1か月かかった仙台空港は両方とも4で、中部国際空港は頻度が4、被害の大きさは5だと判定された。また、ハワイのホノルル空港は逆で、頻度が5、被害の大きさが4だとされた。
「最大規模の津波を想定しておくべき」
オーウェン氏は、「日本は世界で一番津波対策を行っている」としながらも、沿岸地域の空港は、津波のリスクを再評価すべきだとしている。
なお、国土交通省では6月に、有識者を集めた「空港の津波対策検討委員会」を立ちあげており、標高20メートル以下の沿岸空港についてのリスク分析を行う。なお、国交省の発表によると、本州の太平洋沿岸5キロ以内の空港の標高は、仙台(1.7メートル)、中部(3.8メートル)、関西(5.3メートル)、神戸(5.6メートル)羽田(6.4メートル)の順で、羽田は一番高いことになっている。
6月28日に仙台空港ビルで行われた第1回会合では、
「避難計画等のソフト面での対策では、最大規模の津波を想定しておくべき」
といった意見が出された。8月に予定されている第3回会合で、全国の空港に対する津波対策をとりまとめる予定だ。