大臣の「これはオフレコ」に反論せず 「記者たちはなめられている」

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   松本龍・前復興相の「オフレコ」恫喝に多くのマスコミは当初は屈していたのか。オフレコ強要発言をいち早く報じた地元の東北放送や宮城県庁記者クラブ関係者にきいてみた。

   「今の最後の言葉はオフレコです。いいですか、みなさん。いいですか? はい。書いたらもうその社は終わりだから」。松本復興相(当時)が2011年7月3日、宮城県庁での村井嘉浩知事との会談中、取材中の記者らにこう注文をつけた。

記者から「異論」出ず

宮城県庁で起きた「オフレコ」問題
宮城県庁で起きた「オフレコ」問題

   松本氏の発言に対し、その場で異論を唱える記者はいなかった。記者らは「オフレコ」を受け入れてしまったのか。

   宮城県庁関係者に話をきくと、当日取材にきていたのは、大臣の「番記者」ではなく、ほとんどが地元の記者クラブ関係者だった。

   「オフレコ恫喝」場面を含んだ映像をいち早く3日午後に報じた東北放送(TBS系)に聞いてみた。すると、「今回の件はオフレコ(が成立している)とは認識していない」との答えが返ってきた。当日の状況については「報道したことが全てなのでコメントは控えさせて頂きます」との回答だった。

   宮城県庁の記者クラブ員のある男性記者にきくと、松本氏の「オフレコ」発言については、受け入れるかどうかなどクラブ内では議論もされず、「相手にしてない」状態だったという。冗談だと受け止めた記者もいたようだ。

   東北放送以外の社は、「オフレコ」を受け入れてしまったのではないか、との見方が出ていることについては心外に感じている。

   確かに、松本氏が「オフレコ」だと指定した「今の最後の言葉」とは、村井知事に対し、松本氏が「お客さんが来るときは自分が入ってから呼べ。しっかりやれよ」と話した部分だ。その発言部分を報じている社は複数あり、オフレコに乗ったわけではない、というわけだ。

新聞協会「取材源の秘匿などと同次元」

   とはいえ、大臣が「オフレコです」と発言したこと自体を問題視した記事にしなかったことへの疑問の声は挙がっている。

   元産経新聞記者の福島香織さんは7月4日、ツイッター(@kaokaokaokao)で松本氏オフレコ発言について「私なら、囲みネタにぴったり、とか思うけど」とつぶやいた。

   そもそもオフレコとは、どういう仕組みでどんな意味があるのか。日本新聞協会編集委員会は、1996年2月に見解をまとめている。

   見解では、「取材源側と記者側が相互に確認し、納得したうえで、外部に漏らさない」などの条件で行われる取材だ。「取材源の秘匿」などと同次元のもので、「その約束には破られてはならない道義的責任がある」と重々しくその意義に触れている。

   一方で、「これは乱用されてはならず」「安易なオフレコ取材は厳に慎むべき」とも注意を促している。

   見解に従えば、松本氏のような「発言後の一方的通告」ではオフレコは成立しないことになる。

背景にはメディアの甘い姿勢

   とはいえ、松本氏のオフレコ発言が浮き彫りにした問題点は、「松本氏の資質」だけなのだろうか。

   元ロイター通信記者で近畿大准教授の金井啓子さんは、メディア側の問題点を指摘する。「オフレコだ」と言えばマスコミがおとなしく従うとばかりに、オフレコを連発する人たちが増えているからだ。背景にはメディアの甘い姿勢があり、「ナメられている」。つまり、松本氏の例は、氷山の一角というわけだ。

   金井准教授は、信頼関係構築の観点からオフレコ取材の一定の必要性は認めている。しかし、取材源側の「いいなり」でいいはずはない。

   今回の騒動については、「態度の悪い政治家がいた」という側面が注目されているが、むしろこんなに簡単にオフレコ発言が政治家から出てきたこと、さらにそのオフレコ発言を当初は一部のメディアしか報じなかったことの危機的状況に対して注目すべきだと指摘している。

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