東京電力や関西電力など全国の電力会社の株主総会が6月末に開かれたが、原発の安全性や脱原発をめぐる議論は一向に深まらなかった。
東電の「脱原発」を求める株主提案は賛成約8%、反対約89%で否決。賛成票が例年の5%前後に比べ、個人株主に広がったという見方もできるが、機関投資家など圧倒的な既存株主の牙城は揺るがなかった。脱原発をめぐる株主提案は全国6電力会社で行われたが、いずれも否決された。
関電に切り込む平松市長に迫力なし
東電の株主総会は株主9309人が出席し、所要時間は6時間9分、関電は2244人、4時間51分と、いずれも過去最多、過去最長。大もめの東電の株主総会に対して、関電には筆頭株主として脱原発を表明した大阪市の平松邦夫市長が初めて出席。「新エネルギーの開発などに取り組み、原子力から多様なエネルギーの活用に取り組むべきと考える」などと持論を展開した。
関電は議長を務める森詳介会長が「貴重なご意見として承っておく」と述べるにとどまった。平松市長が関電に迫る場面はひとつもなく、白熱した質疑応答を期待した株主には拍子抜けだった。
関電は現在、八木誠社長が電気事業連合会会長を務めているほか、東電の17基に次ぐ11基の原発を保有し、定期検査中の原発の再稼働を目指している。電力業界では「関電が先頭を切って原発を再稼働してくれなくては、他社が追随できない」との暗黙の了解がある。
このためか、関電は「安全確保に万全を期し、信頼回復を図りたい。安全確保を大前提とし、持続可能な低炭素社会を目指したい」(八木社長)などと、「安全な原発」の推進に変わりがないことを何度も強調した。
武力攻撃には政府とともに対応する
関電の原発11基はいずれも福井県の日本海に面している。ここに北朝鮮のテポドンが着弾しても「原子炉は堅牢な格納容器を持っている」と答えたのは、関電の豊松秀己常務取締役だ。豊松常務は「テロ行為があれば治安機関に通報する緊急マニュアルがあり、訓練している。テポドンなど武力攻撃があれば、政府とともに対応する」と一般論を述べた後、原子炉格納容器の安全性に言及。あまりにも楽観的な答弁には、会場から失笑が漏れた。
テポドンをめぐる関電経営陣の発言は、スポーツ紙「スポーツ報知」が「爆弾発言」として大きく報道。「仮に格納容器が壊れなくても、配管1本が壊れるだけで炉心溶融(メルトダウン)が起こりえる。格納容器が大丈夫だからというのは、もともと成り立たないバカげた返答」という専門家のコメントを紹介し、「電力会社と市民との意識のズレが露呈した」と報じたこともあって、関西のテレビはワイドショーなどで大きく取り上げた。