自殺者が2011年5月に急増したのは、有名女性タレントの自殺報道が影響した可能性がある――。内閣府参与がこう発言して、ネット上で論議になっている。全体としては、震災の影響の方が大きいのではないかということを巡ってのものだ。
5月の自殺者数は、前年同月に比べて約2割アップと急激に増えていた。
「報道が若年女性たちの背中を押した」
しかも、内閣府参与でNPO法人自殺対策支援センター・ライフリンク代表の清水康之さんによると、タレントの自殺報道翌日の5月13日からの変化が著しかった。タレントとは、「貧乏アイドル」として活動後に24歳の若さで亡くなった上原美優さんのことだ。
2011年に入ってからは、1日平均82人の自殺者が出ていた。それが、5月13日にはいきなり140人に跳ね上がり、その後の1週間も1日平均124人にまで達していた。その中身を見ると、大都市圏の20~30代が半数以上を占め、しかも、女性が多かった。こうした結果は、内閣府の自殺対策タスクフォースで7月4日に報告された。
自殺者に占める女性の割合は、平均3割ほど。このことからしても異例の増加ぶりで、清水さんは、ツイッターでこの日、「センセーショナルな自殺報道が、表面張力のようにしてやっとのことで『生きること』に留まっていた若年女性たちの背中を押してしまった」との見立てを披露した。
WHOが2000年に発表した自殺報道のガイドラインでは、「写真や遺書を公表しない」「自殺の方法について詳細に報道しない」など6項目の禁止事項が示されている。ところが、清水さんによると、新聞各紙でも、女性タレントの顔写真付きで大きく報道しており、最近もネット上でタレント名と「自殺」を書き込んで検索したところ、547万件もヒットしたという。