チリ北部の鉱山落盤事故で2か月以上も地下に閉じ込められ、見事生還を果たした作業員33人のうち14人が、「肉体的にも精神的にも、後遺症を乗り越えられない」として、政府に年金支給開始の前倒しを求めていることが明らかになった。一時期は英雄視された33人だが、最近は、すっかりメディアの露出も減っていた。「その後」は、どうなっているのだろうか。
落盤事故は2010年8月5日に発生し、その60日後の10月13日(いずれも現地時間)に閉じ込められた作業員33人が救出された。救出作業についてのメディアの露出が多かったのはもちろん、救出後も、様々な形で注目をあびている。
年金の支給開始の前倒しを求める
例えば、2010年10月には米国でテレビドキュメンタリーが放送されたほか、事故を題材とした映画「33人」の製作も進められている。さらに、少なくとも書籍が2冊出版されることになっている。
また、10年12月には英国のマンチェスター・ユナイテッドに招待され、11年2月には、イスラエル旅行もプレゼントされている。作業員のうちひとりは、11年2月の東京マラソンを自己ベスト記録で完走するなど、ある程度の数のメンバーは、それぞれに充実した生活を送るものと思われた。
ところが、やはり事故の後遺症が表面化している模様だ。現地紙のエル・メルキュリオが11年7月3日に報じたところによると、33人中14人が、年金の支給開始の前倒しを求めているのだという。
この14人の中には、最後に救出された現場監督で、閉じ込められた一団のリーダー役でもあったルイス・ウルスアさんや、他のメンバーをケアしていたメンバーも含まれる。それ以外にも、3人がケイ酸の粉じんを吸うと発症する職業病の「珪肺」(けいはい)を発症しているという。