韓国と北朝鮮の「サイバー戦争」が激化するなか、北朝鮮がハッカーの養成を急激に強化していることが明らかになった。2011年6月20日、中東のテレビ局、アル・ジャジーラが、北朝鮮でハッキングの技術を教えていた脱北者の話として報じた。
数学に秀でた小学生をスカウトし、中学校、大学とエリート教育を施すといい、その数は3000人にのぼる。待遇は非常によく、中には「海外派遣組」も存在するという。
中国やロシアに留学、技術を深める
「ハッカー育成」の一端を明かしているのは、2003年に中国経由で脱北し、04年からソウル在住のキム・フングァン氏。脱北者団体「北朝鮮知識人連帯」の代表を務めている。
キム氏は、北朝鮮では有数の工業大学として知られる金策(キムチェク)工業総合大学で情報処理を専攻。卒業後は北朝鮮北東部の咸興(ハムフン)電子情報専門学校で、19年間にわたって「ハッカー候補生」を教えてきた。また、韓国ドラマや外国書籍、機密書類を監視する役割を担っていたが、これらの物品を友人に貸したことが原因で逮捕され、これが脱北のきっかけになったという。
キム氏によると、これまでに3000人のハッカーがリクルートされ、北朝鮮、中国、ロシアなどで活動しているという。その供給源は、全国にある小学校の上位クラスだ。その中から、理科や数学の成績が良く、分析力に優れている生徒は、平壌のエリート校として知られる金星(クムソン)第1・第2高等中学校に入学。ここで6年間にわたって教育を受けると、金日成総合大学や金策工業総合大学といった、北朝鮮ではトップクラスの大学に進む。 大学のカリキュラムは通常より短い2年間で終え、中国やロシアに1年にわたって留学。そこでハッキングの技術を深め、「サイバー兵士」として実戦に投入される。ハッキングを行う「121部」は、「局」に格上げされ、メンバーも500人から3000人に急増したという。
ハッカーの待遇も良く、仮に大学を上位で卒業した場合、地方に住む親を平壌に呼び寄ることができ、結婚しているハッカーには、平壌での住居が与えられる。さらに、海外勤務が長くなると、かなりの貯金ができるという。