「つばの研究をしているから、つばをくれないか」。こう言って女児らのつばを集めていた無職男性(55)が、警視庁などに逮捕された。一体どんなところが「常習卑わい」と見なされたのか。
男性が出没していた東京・多摩地区や埼玉県では、かなり前から、ちょっとした有名人だったらしい。
女児4000人に声かけ、500人からつば集める
ネット上でも知られるようになったのは、5、6年ほど前から。2006年8月には、多摩地区で子どもたちに「つばくれおじさん」と呼ばれる男性が出没し、警視庁が警戒を強めているというテレビニュースが2ちゃんねるに紹介された。その後も、テレビ報道されたり、2ちゃんなどで目撃談が寄せられたりしていた。
そして、警視庁が11年6月13日、つばくれおじさんとみられる多摩地区の男性を都迷惑防止条例違反(常習卑わい行為)の疑いで逮捕したというのだ。
報道などによると、男性は、多摩地区などで10年10、11月、マンション駐輪場にいた小学校5年生女児(10)ら計3人に声をかけ、フィルムケースにつばを吐き出させるとともに、ビデオ撮影までしていた。警察官が12月、似顔絵を元に男性に職務質問したところ、バッグの中からフィルムケースなどが出てきた。
男性は、調べに対し、17年間にもわたって小1~中1までの女児約4000人に声をかけ、約500人からつばをもらっていたと供述している。自宅からは、9、10歳の女児を中心に約200人分のビデオテープなどが押収された。
女児のつばを集めたのは、女の子を連れて行けないので、つばを分身として持ち帰ったのだという。つばを吐く姿に性的興奮を覚え、そのつばも後で飲んでいたとも報じられている。
かつてブルセラ問題が起きたとき、女子高生らのつばが高値で売買されたことがあった。それがきっかけで、都青少年健全育成条例に唾液の売買禁止が盛り込まれている。
男性がビデオ撮影したのは、そのためだったのか。
「自己の性的欲求を満たすためだった」
警視庁の広報課では、逮捕した男性について、唾液売買をしていたことには否定的な見方を示し、「自己の性的欲求を満たすためだった」と説明する。青少年健全育成条例違反で立件しなかったのは、そうした理由からのようだ。
ただ、唾液集めで立件されたのは全国初と報じられ、ネット上では、これが犯罪になるのかについて疑問もくすぶっている。
広報課によると、男性は無理やり女児につばを吐き出させたわけではないという。男性は、「研究」「実験」と説明していたといい、女児もいったんは受け入れたらしいのだ。
それなのに、なぜ逮捕までしたのか。
その理由について、広報課では、迷惑防止条例の5条1項を挙げる。「公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゆう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない」というものだ。そして、男性のケースについてはこう説明する。
「言葉巧みに女児を誘って、その口を開けさせ、舌の様子などもビデオで撮ったりしています。こうしたことが『人に不安を覚えさせるような卑わいな言動』に当たるということです」
報道によると、警視庁には、2005年ごろから被害相談が125件も寄せられていたという。
男性について、広報課では、条例の8条8項にある「常習」だとしており、裁判で認められれば罪が重くなる。1年以下の懲役または100万円以下の罰金になるわけだ。