中国・広州市郊外で大規模な暴動が発生した。加わった人数は1000人に達し、警察車両を次々に破壊。建物に押し入って設備をたたき壊す映像もインターネット上に投稿されている。
北アフリカのチュニジアで起き、中東に連鎖した「ジャスミン革命」と名付けられた民主化運動を、中国でも実現しようと先導するグループも、今回の暴動の様子を執拗に発信している。
車にはねられたように倒れた女性の姿
香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニングポスト」は2011年6月13日、広州市の東側に隣接する増城市で発生した暴動の様子を伝えた。12日ですでに発生3日目を迎えており、21時ごろに市内の新塘地域に1000人を超える出稼ぎ労働者が集結、デモ行進を始めたという。
発端は6月10日、四川省出身の20歳の女性労働者が、新塘にあるスーパーの前で治安当局者に暴力を振るわれたことだ。女性は出稼ぎの露天商で、妊娠中だった。当局側は女性の露天販売をやめさせるための措置だと弁解したが、同じように出稼ぎに来ている人たちの怒りをかってしまったのだ。
デモ隊の向かった先が高級住宅街だったこともあり、警官隊が待ち受けて道路を封鎖。一部暴徒化したデモ参加者が、車を壊したり建物に侵入してガラスを粉々にしたりと大暴れした。中国国営の新華社通信も、暴動の発生を認める一方で、「デモ隊は警察により排除された」と報じた。
インターネットの動画投稿サイト「ユーチューブ」には、暴動を撮影したと思われる映像が公開されている。6月11日付の動画には、夜に集まった無数の人々がシュプレヒコールを上げている様子や、路上に転がる何台ものバイク、横倒しになったパトカーが次々と映し出される。撮影者はかなり足早に移動しながら撮っているが、時折、車にはねられたように倒れた女性や、車体に血痕のようなものがべっとりと付いているシーンなど、生々しい光景が続く。また12日付の動画は、道路のあちこちで火の手があがり、暗闇の中で真っ赤に燃え上がる複数の炎が暴動の激しさを表している。
各動画のコメント欄には、「反中国分子は『雨後のタケノコ』のように現れている」「共産党は消滅だ。中国人民よ立ち上がろう」など、暴動をあおるような内容が見られた。
地元民と出稼ぎ労働者の格差が原因
中国の民主化運動を推進するグループは、ネットを通じて中国各地のデモの様子を伝えている。現地の映像や写真を、ブログやフェイスブック、ツイッターを駆使して流しているが、「中国ジャスミン革命の先導者」と名乗る集団もそのひとつだ。北アフリカのチュニジアで起きた反政府運動が長期政権の打倒に成功したのが「ジャスミン革命」で、以後中東各地に広がって民主化の機運を高めている。これを中国でも起こそうと、民主化を目指す動きとして2011年2月にはネットで大規模なデモの呼びかけが起きた。
「中国ジャスミン革命の先導者」はブログで連日、広州暴動の様子を更新。6月12日は、映像が不鮮明ではあるが、デモ参加者が建物に入り、大きな音を立てながら破壊を繰り返す映像を紹介している。13日のブログ記事によれば、デモの起きた周辺は地元民と出稼ぎ労働者の間の貧富の格差が特に大きな地域で、日頃から労働者側の不満が蓄積していたと分析。今回の露天商の女性「殴打事件」により一気に火がついて暴動が広まり、当局側でも簡単に抑え込むのは難しいと見ているようだ。
中国では、内モンゴル自治区で2011年5月、モンゴル族による地元政府への抗議デモが発生。6月に入っても湖北省利川市で、住民側の立場に理解の深かった市の幹部が汚職で逮捕されたうえ、後に急死したため、市民がデモ隊を結成して警官隊と衝突するといった騒ぎが起きた。