夏の節電対策で首都圏はじめ全国で扇風機が例年を上回るペースで売れ、ちょっとした「扇風機特需」となっている。東京電力の今夏の節電要請を受け、「エアコンがダメならせめて扇風機でも」という消費者心理の反映らしい。
扇風機とエアコンを併用すれば、少ない電力で効果的な冷房ができるという電機メーカーなどの呼びかけや、古い扇風機を下手に使うと発火するなどの注意喚起も影響している。グリーンカーテンとの組み合わせによる節電効果も注目を集めている。
前年比4.4倍、「退役家電」の扇風機が復活
調査会社GfKジャパンによると、2011年5月の扇風機の販売台数は全国平均で前年同月比4.4倍、関東甲信越が同6.4倍と高い。これに対して関西は同2.7倍と低いが、いずれも昨年を大きく上回るペースで 扇風機が売れている。2010年は記録に残る猛暑で、扇風機も売れた年だっただけに、11年の伸びは特筆に値する。扇風機の国内の販売台数は例年650万台から700万台とされるが、今夏は1000万台を軽く超え、倍増近くに達すると見られている。
このため東芝、三菱電機など電機メーカーはフル生産で、昨年の6割増の増産体制に入っているメーカーもあるという。扇風機はエアコンが要らない冷涼な北海道ではコンスタントな需要があるが、エアコンが普及した本州以南の需要は限られていた。1960年代は夏の必需品だった扇風機は、北海道以外では「退役家電」と思われていたが、今夏は「特需」となるほど存在感を増している。政府によると、エアコンの冷房を切り、扇風機に切り替えると、消費電力は50%削減できるとされ、大幅な節電効果が期待できる。
そこまで我慢しなくても、エアコンの設定温度を上げ、冷風が届きにくい場所に扇風機で風を送るなどすれば、冷房効果が高まるという。真夏の猛暑時にエアコンの設定温度を皆が1度上げるだけで、東京電力管内で原発1基分に当たる約100万キロワットの節電効果があるだけに、エアコンのみならず、扇風機は有効というわけだ。