静岡市の藁科地区で生産された「本山茶」から、国の暫定規制値を超える放射性物質が検出された。
静岡県は政府の検査要請にも当初は反発、県自体の調査では規制値超えは出なかったものの、東京の販売業者による自主検査で発覚し、県の再検査で確認された。
県調査の19産地は規制値下回る
問題となっているのは、静岡市藁科地区のある工場で生産された一番茶の製茶だ。有機野菜などの宅配サービスを行う「らでぃっしゅぼーや」が自主検査を実施したところ、同地区や両河内地区の製茶から、国の暫定規制値(1キロあたり500ベクレル)を超える521~569ベクレルの放射性セシウムが検出された。
この申告を受けた静岡県が再調査を実施すると、藁科地区の製茶に限り、1キロあたり679ベクレルの放射性物質が検出された。県内の製茶が規制値を超える結果が判明したのは初めてだ。
業者から県に申告があったのは6日で、県が再調査して結果を公表したのは9日。らでぃっしゅぼーやの担当者は、「風評被害につながる恐れもあり、再確認の意味でも、県の検査を待つことにした。一部で報じられているように、県から公表を控えるように求められたわけではない」と話す。同社は10日にホームページ上で利用者に知らせている。
静岡県によれば、規制値を超えたのはこの工場だけで、すでに業者には出荷自粛・自主回収を要請した。県が一番茶の製茶を対象に6月6~8日に実施した調査では、19か所の産地すべてで放射性セシウムが検出されたが、最高は静岡市の本山茶の413ベクレルで、いずれも規制値は下回った。
規制値上回れば出荷自粛・自主回収
県茶業研究センターによると、「飲用茶ではセシウム量は85分の1に薄まるため、健康への影響は心配ない」。しかし、静岡県は日本を代表する茶の生産地で規制地を超える結果が出たことで、動揺する人も多い。
県は今後、「藁科地区にある約100か所の工場で検査を実施し、規制値を上回る茶工場が出た場合には出荷自粛・自主回収を要請する」としている。二番茶の荒茶についても、一番茶の製茶を検査した19地区で検査を進める。川勝平太知事は、東電や政府に生じた損害の賠償を求める方針も明かしている。
「規制値に科学根拠的な根拠がない」として、当初は政府が求める検査に難色を示していた静岡県だが、早急に検査を進めることで被害を食い止めたい考えだ。静岡市長の田辺信宏氏も、「県や市内JA、茶商組合などと連携をとって、風評被害の沈静化と消費拡大に向けて対応してまいります」とコメントしている。
茶の放射性セシウム量の規制については、生茶葉で1キロあたり500ベクレル、飲用茶で200ベクレルの暫定規制値を設けられていたが、政府は6月2日、荒茶や製茶についても500ベクレルの規制値を適用すると発表。すでに茨城県全域、神奈川、千葉、栃木3県の一部地域で、規制値を上回ったとして出荷制限を指示している。