震災後に、将来不安から結婚したい人が増えたと話題になった。ところが、夫婦はといえば逆に、離婚したい人が増えてきたというのだ。
「2か月半以上経ちまして、いま反対の現象が起き始めています」
「頼もしかった夫が買いだめ」
フジテレビ系で2011年5月30日に放送された「とくダネ!」では、その現象である「震災離婚」が特集された。
それによると、東京都内の法律事務所では、震災後の離婚相談件数が、2、3割ぐらい増えている。また、被災地に近い仙台市内の離婚相談所では、相談が震災前の3倍に達した。そして、これから大きな問題になりうるというのだ
その理由について、法律事務所の弁護士は、「地震を巡る対応によって、夫婦の価値観の違いみたいなのが出て」と説明した。離婚相談所では、「前からの夫婦関係がうまくいってないのが原因」としていた。
番組では、離婚のパターンとして、原発事故の影響について考え方が食い違ったり、結婚相手が自分の両親ばかりを心配してしまったりしたことを挙げている。
震災離婚についてはこの日、NHKでも言及があった。情報番組「あさイチ」で、「震災でこんな夫に幻滅」とアンケート内容が紹介され、頼もしかった夫が買いだめをしたり、風評にオロオロしたりして、「人間ちっちゃい」とみなされたというのだ。20代の若者からは、「震災で相手の本性が見えて『震災離婚』というのも増えているそうです」とのFAXが届いたことも紹介された。
週刊誌でも、震災離婚が特集されるようになってきている。
アエラの5月30日発売号では、首都圏の夫婦416人へのネット調査で、なんと15%ほどの人が震災をきっかけに離婚について考えていたと明かした。
不倫している愛人が大切だと離婚申し出た
アエラ記事では、放射性物質について神経質になっている妻が、まったく無神経な夫の態度に愛想をつかしているケースなどを挙げた。「自分は不安だが、相手は動じない」と意識のギャップを挙げる人が14.4%もいた結果なども紹介している。
離婚事情に詳しい夫婦問題研究家の岡野あつこさんは、離婚を考えるパターンが、夫と妻ではだいぶ違っているとも指摘する。
「妻の場合は、夫が私のことを心配してくれないと愛想を尽かしたり、自分が子どもや親の方を心配していることに気づいたりして、離婚を考える人が多いです。それに対し、夫の場合は、不倫している愛人の方が大切だと気づいて離婚を申し出たといったケースが目立ちました」
離婚相談は、震災がらみのものが徐々に出てきて、以前より1、2割ほど増えたという。女性の方が、直情型なのか件数は多いそうだ。
夫婦関係を保つ方法について、岡野さんは、「『何より無事でよかった』と相手を大切に思うことが大事です。長く一緒にいると考え方にズレも生まれますが、相手が何を考えているかをよく考え、もう一度初心に返ることですね」と言う。
アエラの調査では、夫婦の4人に1人が震災後に絆が深まったとも答えている。「よく考えれば、相手の考えを知ることが大事だと気づくはずです。それが最も大切だと思いますね」